詐欺の時効は3年or7年!民事・刑事、それぞれの時効と注意点を解説

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投稿日時 2018年12月11日 19時30分
更新日時 2018年12月11日 19時30分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 詐欺被害にあったことに後から気がついた人

  • 昔の詐欺被害を今からでも取り戻せないか知りたい人

  • 時効を過ぎてしまった場合でもお金を取り戻せないか気になる人

はじめに

詐欺の被害に遭ったので、相手を訴えたい!

そんなとき重要となるのは、詐欺の時効。詐欺被害で取られたお金を取り戻す民事訴訟も、加害者を罪を問う刑事告訴も、時効が過ぎてしまうとできなくなってしまうからです。

そこでこの記事では、民事・刑事の時効について詳しく解説。

万が一時効を過ぎていた場合の対処法も紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。


1.詐欺の時効は2パターン!民事・刑事それぞれのケースを紹介



詐欺を訴える方法には民事訴訟刑事告訴の2つがあり、それぞれで時効も異なります。

まずは両者の違いと共に、それぞれの時効について紹介していきましょう。

①詐欺を訴える場合には民事・刑事2種類の方式がある

  • 民事訴訟

    詐欺の民事訴訟は、なんらかの契約をした人どうしのトラブルについて争うもので、契約の取り消しや損害賠償金の支払いが主な目的となります。

    民事訴訟を行うときは、相手の住所地を管轄する簡易裁判所に必要書類を提出します。なお、請求する金額が140万円を超える場合は、地方裁判所の取り扱いとなります。

  • 刑事告訴

    刑事告訴は、警察に刑事事件として捜査を行ってもらい、相手を法的に罰することが主な目的となります。民事訴訟と違い、刑が確定した場合でも、詐欺で取られたお金が戻ってくることはありません。

    刑事告訴を行うときは、最寄りの警察署に告訴状を提出する形となります。

②民事訴訟の時効は3年と20年

詐欺事件の民事訴訟の時効には、3年20年の2種類があります。

3年は、被害者が詐欺の損害を受けた事実とその加害者を知ったときから損害賠償金を請求できる期限です。ポイントは、詐欺被害と加害者の両方を認識していないと、3年の時効消滅がスタートしないということ。

詐欺被害にあったとわかってから3年が経過していても、まだ加害者が特定されていなければ時効のカウントは進みません。

ただし、詐欺の発生から数えて20年経つと時効になります。こちらは加害者の特定や被害の認識とは関係なく認められます。

③刑事告訴の時効は7年

刑事告訴をした場合の時効は、公訴時効と呼ばれます。

公訴とは検察官が逮捕された人間を起訴することで、その時効は詐欺行為が終わってから7年。時効が成立してしまうと、被疑者を罪に問うことができません。

また混同されやすいものとして、「刑事告訴の時効」があります。

被害者本人が通報しないと犯罪とみなされない、親告罪と分類される犯罪があります。(例:名誉棄損)。これらについては、被害者本人が加害者を特定してから6ヶ月以内に告訴しなければ時効となります。

詐欺罪は親告罪ではないため、刑事告訴できる期間に時効はなく、6ヶ月を過ぎても告訴をすることができます。

ただし警察が捜査する時間を確保し、公訴時効成立前に検察に起訴してもらうためにも、早めに刑事告訴を行いましょう。

民事訴訟と刑事告訴には、以上のように時効には大きな違いがあります。どちらの方法を取るにしても、なるべく早く行動することが大切です。


2.諦めるには早い!時効を過ぎていた場合に確認したいことを解説



これまで紹介してきた時効が過ぎてしまった場合でも、一部の条件を満たしていれば時効の延長や停止などを行うことができます。

民事・刑事それぞれの場合について、解説をしていきましょう。

①民事訴訟の場合は、相手が「時効の援用」をしているかを確認

まずは民事訴訟について見ていきましょう。

  • 相手が時効の援用をしていなければ可能性も

    時効は本来、時効を迎えたことを相手側が主張する「時効の援用」によって効力を発揮します。

    つまり、加害者に「あなたの損害賠償を請求できる権利は時効によって消えましたよ」と主張されたときに初めて時効は成立するのです。

    加害者から時効援用通知書が届いてない限り、民事訴訟を起こすことができます。相手が時効の援用を知らないまま、損害賠償の判決が出れば、後から「これ、本当は時効が成立していたのではないか」と相手が主張してきても、損害賠償金を支払わせることが可能です。

    ただ大半の場合、多くの加害者は訴訟の中で時効の援用を主張する形となるでしょう。

②【刑事】公訴時効は延長されることもある

次に、刑事公訴のケースを見ていきます。

  • 加害者の居場所によっては時効の進行が停止する

    加害者が国外にいた場合は、その期間分だけ公訴時効が停止します。

    例えば2005年に詐欺行為が終わり、その直後、加害者がアメリカに7年間逃亡して2012年に帰国した場合、2019年までが公訴時効となるので2018年でも訴えることが可能です。

    また、海外旅行に行くだけでも、旅行中は時効が停止し、帰国してから時効が再開します。

    1999年に詐欺行為を行い、2007年に詐欺罪で起訴された男性の事例では、男性が犯行から起訴までの間、海外渡航により国外で324日過ごしていたため、検察側は「海外旅行の間時効が停止したため、まだ時効が完成していない」と主張。

    最高裁がこの主張を認め、「一時的な渡航でも時効は停止する」と判断しました。

  • 公訴することで、時効が停止する

    加害者が逃げ隠れていたために起訴状を送ることができなかった場合は、検察が公訴し、裁判所が公訴を棄却するまでの間、時効が停止します。

    日本ヘルシー産業社長脱税事件では、元社長が所在不明の状態で42回もの起訴を繰り返して時効を何度も停止し、時効が成立する前に元社長を逮捕しました。


3.民事訴訟・刑事告訴を行う方法とは?必要な手続き



それでは実際に、民事訴訟・刑事告訴を行う方法についてご紹介します。

①民事訴訟の場合にとれる手段

民事訴訟の場合にとれる手段は、大きく分けて少額訴訟・民事訴訟・集団訴訟の3つです。

  • 少額訴訟

    少額訴訟とは、60万円以下の少ない金額を請求するときにできる訴訟手段のことです。自分でひとりで準備ができるため弁護士費用がかからず、1回の審理で終了するため、簡易的な裁判といえます。

    実際に少額訴訟を起こす際には、詐欺をした相手方の住所地を管轄する裁判所に以下の書類を提出します。

    訴状(各裁判所に備え付けている定型用紙、裁判所のウェブサイトからダウンロード)
    証拠書類(契約書や通話記録など)
    登記事項証明書(法人の場合)

    書類の受付が終わり、相手の同意を得たらお互いが法廷に立って意見を言い合う審理となります。その日のうちに判決がくだされ、勝訴した場合は相手に損害賠償金を請求することが可能です。

    ただし相手が判決に対して不服を申し立てたり、最初から少額訴訟を拒否してきた場合は、通常の民事訴訟に移行します。

    通常の民事訴訟は、弁護士への相談が必要です。

    詳しくは下記の記事を参考にしてください。


  • 民事訴訟

    「加害者と直接やり取りをする少額訴訟は自信がない」という人は、最初から弁護士に相談するのもひとつの方法です。

    すべての対応を弁護士に任せることで、精神的な負担を減らせます。また弁護士に依頼することで相手へ心理的なプレッシャーをもたらすことができ、請求に応じる可能性も高くなります。

    弁護士に依頼した際にかかる費用は以下の通りです。

    相談料(無料としている法律事務所もあります)
    着手金(事件着手時に発生する費用)
    成功報酬(解決時に発生する費用)
    日当(弁護士が遠方へ出張した際にかかる費用)
    実費(書面の作成などの費用)

    まずはどのくらい費用がかかるのか、法テラスに無料相談をしてみましょう。

  • 集団訴訟

    「弁護士に相談したいけどお金がない」という人は、集団訴訟という選択肢もあります。同じ相手から詐欺被害にを受けたふたり以上が協力し、訴訟を起こす方法です。

    メリットとしては、証拠の共有や費用の分担などが挙げられます。

    集団訴訟の場合、ほかの人の証拠を被害者全員で共有して「自分の事件も同様の手口だった」などと主張でき、参加者が多ければ多いほど証拠が集まり、訴訟を有利に進められます。

    また、民事訴訟でもご紹介した弁護士の費用を訴訟に参加した全員で分担できるため、ひとりあたりの負担が軽くなります。

    詳しくは下記の記事を参照してください。



②刑事告訴を行う手段

刑事告訴を行う場合には、最寄りの警察署に告訴状・証拠・登記事項証明書(法人の場合)を提出します。

  • 告訴状を提出する

    告訴状の書き方に特に法的な定めはなく、以下の必要事項をA4サイズの用紙に横書きで記入します。

    「告訴状」というタイトル
    宛先(例:渋谷警察署長殿 神奈川県警察署長殿)
    告訴人の住所と連絡先、名前、押印
    被告訴人の名前
    告訴の趣旨(該当する罪名や罰条、処罰を求める意思表示を記入)
    告訴の事実(いつ、誰が誰に対し、どのような詐欺を行ったのかを記入)

    ただし、告訴状は受理されにくいのが実情です。

    なぜなら、告訴状を受理すると、警察は捜査を行う義務が生まれるからです。「証拠資料が足りない」「捜査人員が不足している」といった理由で、告訴状が受理されないケースは少なくありません。

    それでも詐欺の加害者の罪を問いたいと考えているなら、こちらも弁護士に相談しましょう。受理されやすい告訴状を書いてくれたり、証拠の集め方についてアドバイスしてくれます。


  • 被害届を出すという手段も

    被害届とは、自分が詐欺被害にあったことを警察に知らせる書類です。

    告訴状と異なり、受理されたからと言って必ずしも捜査をしてくれるわけではありません。

    しかしあらかじめ提出しておくことで、訴訟や交渉を有利に進められたり、詐欺被害による損害保険などを利用する際に必要になることもあります。被害届を提出する際には、以下の内容を書く必要があります。

    被害者の住居、職業、氏名、年齢
    被害の年月日時
    被害の場所
    被害の模様
    被害金額(品名、数量、時価、特徴、所有者)
    犯人の住居、氏名又は通称、人相、着衣、特徴等
    遺留品その他参考となるべき事項

    ただし、被害届が受理されないケースもあります。警察に「これは民事事件で、刑事事件ではない」と判断されると、警察が介入するべきものではないとして、被害届を受理してもらえないことがあるのです。

    もしも不安なときは警察相談専用電話(TEL:#9110)や消費者ホットライン(TEL:188)に相談して、専門的なアドバイスを受けてみましょう。

    また、被害届を受理してもらうためのポイントについては、下記の記事でご紹介しています。参考にしてください。



4.まとめ

  • 詐欺被害の回復のためには、民事と刑事の2パターンの訴訟方法がある。お金を取り戻したいなら民事訴訟、相手の罪を問いたいなら刑事告訴を行う。

  • 民事訴訟の時効は3年か20年、刑事公訴は7年。

  • 自分に合った訴訟方法を選んで、必要な書類をすぐに提出しよう。

おわりに

詐欺の加害者に対して訴えられる期間は残念ながら決まっています。ですが例え時効が過ぎたとしても、場合によっては訴訟を起こすことが可能です。

何年も前に被害にあった人も、諦めずに専門機関に相談してみてください。


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