「TATERU」不正融資の問題点は?弁護士に聞いた3つのポイント

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投稿日時 2018年09月28日 13時24分
更新日時 2018年09月28日 13時24分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • TATERU不正融資のニュースを見た人

  • マンション運営をはじめようと思っている人

  • 知り合いにマンションオーナーがいる人

はじめに

アパート経営の提案・仲介などを行うTATERUが、建設資金を借りたい顧客のために預金通帳を改ざんし、資産の水増しを行っていたことが2018年8月31日にわかりました。シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営のスマートデイズに続く不正融資問題となり、大きな波紋を読んでいます。

この記事ではTATERUの不正融資における法的な問題点はどのようなものがあり得るのか、トップコート国際法律事務所の山田政樹弁護士の監修のもと解説していきます。


1.どこがポイント?問題発覚までの流れまとめ



まずは事件発覚までの流れについて、時系列順にまとめてみましょう。

日時 経緯
2018年  
3月 都内在住の50代男性がTATERUにアパート経営の資料を請求
4月 TATERUが名古屋市内の木造アパート物件を提案
購入資金およそ1億1000万円の融資を西京銀行から受けるという説明を受け、男性は手付金50万円を支払い、土地売買契約と工事請負契約を結ぶ
5月 TATERUからの要求を受け、男性は自身のインターネットバンキングの取引履歴をTATERUに渡す
TATERU、融資の承認が下りたと男性に連絡
6月 男性、TATERU担当者が西京銀行に提出した取引履歴の画像をメールで取り寄せた結果、残高の改ざんが発覚
男性、契約解除時の違約金に関する条項に基づき、違約金およそ1200万円をTATERU側に請求
7月 TATERU、手付解除に関する関する条項に基づき、手付金の2倍にあたる100万円を男性の口座に振り込む
8月 男性からの相談を受けた弁護士が改ざんの事実についてTATERU側に質問。TATERUは改ざんがあったことを認める

以上が、今回の問題の大まかな流れとなります。
では今回のケースに関して、どんな問題があるのでしょうか。

ポイントとなる部分をトップコート国際法律事務所の山田政樹弁護士に聞きました。


2.今回の不正融資に関する法的な問題は?3つのポイントを解説



①残高を改ざんして融資を受けさせたことは詐欺となりうる?

報道によると、顧客である会社員男性は取引履歴のデータをTATERUから求められた際「残高が少ない」ということを伝えていました。にもかかわらず担当者は「問題ない」と回答し、その後、残高の改ざんが発覚しています。

こうしたケースは、法的にはどういった点が問題となるのでしょうか。

「たとえば、TATERUの従業員が西京銀行に対し虚偽の事実を告げるなどの明示的な詐欺行為または黙示的な詐欺行為を行い、かつ、顧客側がこの詐欺の事実を事前に知っていた場合、西京銀行側が融資契約の取消をし、顧客に対し一括弁済を要求できる余地はあります

もっとも、そもそも銀行側が虚偽資料を提出された場合に備えた条項を融資契約に盛り込んである場合が多いと思いますので、銀行があえて詐欺取消をすることは少ないように思います」

報道によれば、今回のケースでは西京銀行側が改ざんに気が付いたため、融資はおりなかったとされています。

しかし、仮に他のオーナーが同様の手口で融資を受けていた場合、顧客側がそれを取り消すことは可能なのでしょうか。

「虚偽の資料によって誤信を生じたのは、あくまで西京銀行側であるため、顧客側からの詐欺取消は考えにくいと思われます。むしろ、顧客が改ざんの事実を知っていた場合は、銀行側が融資契約に基づき、顧客に一括返済を求めていくことを検討することもあると思われます

そのため顧客側としては、こうした他人の不正行為に巻き込まれないよう注意が必要です。融資金額に比べて必要な頭金が少なすぎるなど、融資条件が有利すぎると感じた場合は、融資の申込み前にいったん冷静になり、きちんと確認していくのがよいかと思います」

②TATERU側に損害賠償の請求は可能?

報道によると、男性はTATERU側の担当者から「実質的に自己資金なしで経営をすることが可能」という説明を事前に受けていたとのこと。

さらに、改ざん前の口座残高はおよそ20万しかなかったにも関わらず、月々40万円近い返済が必要になるという、リスクの高い投資を勧められていたことも明らかとなっています。

仮に同様のやり方で契約をしていたオーナーがいた場合、こうした「本来は融資の下りないような投資を虚偽の事実を伝えて行わせる」という売り方に法的な問題はないのでしょうか。

「一般論として、TATERU社の従業員が顧客に、虚偽の空室率や利回りなどの事実を告げるといった詐欺行為におよび、かつ顧客がそれを信じて取引を行った結果損失を受けた場合は、顧客がTATERU社やその従業員に対し損害賠償請求ができる余地はあると思われます。顧客が不動産事業に失敗した場合は、このような請求が可能か検討される余地はあるでしょう。

しかし、投資一般に言えることですが、自分にとって有利なセールストークがなされたら、どうしてそれが可能なのか、それは合法的なものなのか、そのセールストークに乗って取引したら誰が得して誰が損をするのか、冷静に確認したほうがいいと思います。

その取引が将来、自分の資産と資金繰りに与える影響の程度の確認も行ったほうがよいでしょう」

③そのほかの問題点

アパート経営希望者とTATERU間での問題以外としては、どんな問題があるのでしょうか。

「刑事事件として、改ざんを行ったTATERUの従業員に私文書変造罪が成立する可能性はあります。

また、事実関係が明らかになるまではわかりませんが、具体的な事情によっては、その従業員や資料の改ざんを知っていた西京銀行の従業員に、同銀行に対する詐欺罪などの成立を検討する余地が出てきます。

顧客がTATERU社の従業員と共謀して虚偽の資料を提出したような場合には、その顧客にも同銀行に対する詐欺罪が成立しないか問題となるので注意が必要です」


おわりに

TATERUは2018年9月4日、外部専門家を中心とした特別調査委員会を設置。およそ3ヶ月をかけて問題の調査にあたるとしています。また9月14日には、業務フローの見直し、預金通帳の原本確認の徹底、コンプライアンス教育の強化を掲げた再発防止策を発表しました。

しかしその一方で、諸経費や消費税を組み込まずに利回りを大きく見せていたり、事前に聞いていた事業計画と実態が大きく離れていたりと、その売り方にも問題があったとの報道もなされています。


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