この記事は以下の人に向けて書いています。
- 振り込め詐欺の被害にあい、お金を取り戻したい人
- 振り込め詐欺救済法の内容や手続きを知りたい人
- 制度の利用する際の注意点を知りたい人
はじめに
「振り込め詐欺救済法」とは、オレオレ詐欺や還付金詐欺など、銀行口座への振り込みを利用した詐欺被害者を守るために作られた制度のこと。
被害者の申請を受けて、銀行が加害者の口座を凍結。残った残高を被害者に分配するというもので、
利用すれば騙し取られたお金を取り戻せる可能性があります。
この記事では振り込め詐欺救済法を実際に利用するためのステップや、利用時の注意点について紹介していきましょう。
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1.さっそく利用してみよう!申請から返金されるまでの4ステップ
詐欺にあった場合は、とにかく素早く行動することが大切。ぐずぐずしていると詐欺グループはお金をすべて引き出してしまい、取り返すことが困難となるからです。
そこでこの章ではまず、振り込め詐欺救済法の手続き全体の流れについて説明していきます。
被害者側が必要な手続きは【被害者】、金融機関側などが行う手続きは【金融機関・預金保険機構】と表記しています。
もしあなたがすでに被害にあっている場合は、【被害者】と書かれた項目を行うようにしてください。
①【被害者】警察と金融機関に詐欺被害を申し出る
振り込め詐欺救済法を利用するためには、警察と金融機関のふたつに申し出る必要があります。
- 金融機関での手続き
まずは、振り込んでしまった口座がある金融機関に連絡しましょう。
すでにほかの被害者から通報があった場合などは、すみやかに凍結に動いてくれる場合があります。
問い合わせ先は、銀行の場合は全国銀行協会のウェブサイトに記載されている各銀行の詐欺被害者専用ホットライン、そのほかの金融機関の場合は各ウェブサイトの相談窓口です。
名義や口座、被害状況を伝えた上で「犯罪に使われた口座なので凍結(取引できないように)してほしい」と依頼しましょう。
もしほかの被害者からの通報がない場合などは、警察への被害届を出す必要があります。
いずれにせよ、返金の際などに被害届を出したかどうかの確認が必要となりますので、申請が受理されたかどうかにかかわらず、銀行に伝えたあとは必ず警察にも通報しましょう。
- 警察での手続き
次に、警察に「被害届」を提出しましょう。
警察庁のウェブサイトから最寄の相談窓口に連絡をしたうえで、警察署に被害届を出しに行きましょう。
被害届を出すには、加害者の口座番号や電話での録音内容、郵便物などの証拠と一緒に持っていく必要があります。
詐欺によっては詳細な情報が必要な場合もあるので、あわせて事前に確認してみてください。被害届の必須項目や不受理となるポイントについては、下記で詳しく解説しています。
②【金融機関・預金保険機構】口座の取引を停止し、消滅手続きを行う
金融機関は加害者の口座を凍結すると、
消滅手続きを始めます。
消滅手続きとは、口座の名義人(持ち主)が持つ権利を消滅させ、預金を自由に扱えなくする手続きのことです。
金融機関からの依頼を受け、まず預金保険機構という団体が、
ウェブサイトに「消滅手続のための公告」というお知らせを60日間掲載します。60日間に名義人から何のアクションもなければ、その口座の預金は名義人のものではなくなります。
この手続きが終わると、今度は
「消滅預金等債権について被害回復分配金の支払手続が開始された旨等の公告」が掲載されます。これは、
被害者に「お金を支払う準備ができたので、申請してほしい」と知らせるもの。
なお、これらのお知らせには、そのほかにも現在の手続きの状況、犯罪に使われた口座の名義人の氏名や名称、残高なども掲載されます。あわせて定期的にチェックするとよいでしょう。
③【被害者】「分配金支払いのための公告」を受け、支払い申請を行う
分配金の支払い申請の受付が開始されると、すでに被害を金融機関に報告していた場合は、金融機関からの連絡が来ます。その案内に従って、返金を受けるため申請を行いましょう。
しかし念のため、
預金保険機構のウェブサイトでも申請の受付開始が掲載されていないか、定期的に確認するようにしておきましょう。
申請の際には、下記の書類が必要となります。
・被害回復分配金支払申請書(預金保険機構や各金融期間からダウンロード)
・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
・振り込みの事実を確認できる資料(通帳や取引の明細書など)
これらの書類を、振り込んだ口座のある金融機関に郵送するか、直接窓口を訪問して提出しましょう。
この手続きは、連絡で伝えられた一定の期限内に行う必要があります。
申請期間を過ぎてしまうと返金を受け取ることができませんので忘れないようにしてください。
また、口座残高が1000円未満の場合や、消滅手続き中に口座の名義人が中止の申し出をし、それが受理された場合は、被害者にお金が支払われることはありません。
④【被害者】支払額が確定し、支払いを受ける
支払手続きの申請期間が終了すると、支払額が確定して被害者に戻ってきます。
ただし、口座残高が被害金額よりも少なかった場合、口座に残っている分のお金しか返ってきません。
また、複数の被害者が同じ口座に申請している場合、それぞれの被害額に応じて口座残高を分配することになります。
たとえば、4人が振り込め詐欺の被害にあい、凍結された口座には200万円の預金が残っていたケースを考えてみましょう。
4人の状況は以下の通りです。
Aさん…被害額 50万円 申請なし
Bさん…被害額100万円 申請あり
Cさん…被害額150万円 申請あり
Dさん…被害額250万円 申請あり
この場合、
200万円はAさんを除く3名の被害額の割合(1:1.5:2.5)に応じて分配されます。
つまり支払額は、
Aさん…0円
Bさん…40万円
Cさん…60万円
Dさん…100万円
となります。(被害の上限を超えて分配されることはありません)
支払金の金額については個別に連絡が来るほか、金融機関に閲覧請求書と本人確認資料を提示すれば支払額の決定表を見ることができます。
確定した
支払金の入金は、基本的には口座振込です。最近では、
「支払金を受け取るためにATMまで行ってほしい」という還付金詐欺に似た悪質な詐欺もあるようです。ATM操作で振込手続きをすることは絶対にありませんので注意してください。
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2.注意するべき救済法のルール4つを徹底解説!
振り込め詐欺救済法は悪質な詐欺から被害者を守ってくれる法律です。
しかし場合によっては被害回復給付金支給制度が適用されないこともあるなど、注意しなければならない点があります。
この章で詳しく説明していきます。
①対象となるのは口座振り込みを利用した詐欺のみ
振り込め詐欺救済法の対象は、
口座振込型の詐欺のみです。口座振り込みを利用していない場合は振り込め詐欺救済法が利用できません。
たとえば、
・弁護士の代理人と名乗る人物に直接現金を渡してしまった
・偽の銀行員にキャッシュカードを渡してしまい、知らないうちに預金を引き出された
・ゆうパックで現金を加害者に送ってしまった
・プリペイドカードの番号を撮影した写真をメールしてしまった
といったケースは、そもそも凍結するべき口座がわからないため、対象外となります。
②口座凍結から返金開始までには数か月かかる
金融機関が凍結した口座を加害者が完全に使えなくするためには、預金保険機構の公告が出されてから60日以上の日数が必要です。
また支払手続きでは、他の被害者にも適用されるように30日以上の申し出期間を設けなければいけません。
場合によっては、消滅手続きから支払手続きの申請が始まるまで約1ヶ月程度かかることもあります。
口座凍結から実際の支払いまでは、最短でも4~5ヶ月程度かかるとイメージしておきましょう。
③返金された被害は加害者に請求できない
加害者に訴訟を起こして被害を取り戻す場合、すでに返金された分配金は損害として請求することができません。
例えば100万円の被害にあい、振り込め詐欺救済法による分配金が30万円だったとします。
このとき、民事訴訟で加害者に請求できる損害賠償額は、
100万円から30万円を引いた70万円となります。
30万円の被害は、すでに分配金で回復されているため、請求することができないのです。
④支払いの利用明細がなくても、お金を返還してもらえることもある
還付金詐欺などの場合、被害者に詐欺だと気づかれるのを遅らせるために、ATMから出てきた利用明細を捨てるよう指示してくる場合があります。
しかし、仮に明細書を処分してしまった場合でも、金融機関が振り込みの事実を確認できれば振り込め詐欺救済法を適用してもらうことは可能です。
ただしその際、振込日や振込先口座の口座番号、振込金額といった振込内容を金融機関に十分に説明しましょう。
3.振り込め詐欺救済法以外の返金方法は?対処法3つ
振り込め詐欺救済法では、口座凍結前に引き出されたお金を返金の対象にすることができません。しかし、振り込め詐欺では、被害者が入金したら加害者がすぐにお金を引き出すケースがほとんど。
あんなに多額のお金を振り込んだのに、これしか戻ってこないなんて……
返金された金額に納得がいかない人のために、ここでは振り込め詐欺救済法以外の返金手段3つをご紹介します。
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①消費者団体訴訟制度を利用する
消費者団体訴訟制度は、
国が認定する消費者団体(特定適格消費者団体)に代理で訴訟を起こしてもらい、とられたお金を請求する制度です。
被害者がすることは、特定適格消費者団体に情報を提供するだけ。弁護士の選択や各種の手続きなどはすべてやってくれるので、手間なく訴訟に参加できます。
また加害者にプレッシャーをかけて返金を促せるのもメリットのひとつ。実際に団体からの勧告を受けて、訴訟前に相手が返金に応じたケースもあります。
ただし、団体が実際に訴訟を起こす際には、以下の3つすべてに当てはまっていなければなりません。
・多数性…被害者が少なくとも数十人いる
・共時性…被害者が同じ詐欺で被害を受けている
・支配性…ひとりひとりが本当に被害を受けていると判断できる
そのため、通報しても必ず訴訟をしてくれるわけではないことに注意をしてください。
特に犯人の素性がわかりづらい振り込め詐欺被害においては、民事訴訟そのものを起こすことが難しいケースがほとんどです。
通販会社による大規模な被害など、限られたケースでのみの対応となることは意識に留めておいてください。
特定適格消費者団体と、それぞれの連絡先は以下の通りです。
- 特定非営利活動法人 消費者機構日本
情報入力フォームはこちら
TEL:03-5212-3066
- 特定非営利活動法人 消費者支援機構関西
情報入力フォームはこちら
TEL:06-6945-0729
- 特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
この団体は、直接連絡して情報提供をします。詳細はこちらを確認してください。
TEL:048-844-8972
FAX:048-829-7444
②民事訴訟を起こす
裁判所に訴状を提出し、民事訴訟を起こす(訴える)のもひとつの手です。
・被害者の氏名と住所、加害者の氏名と住所
・請求の趣旨(加害者にどうしてもらいたいか)
・請求の原因(詐欺の詳細)
などを記入した訴状を、被害の内容が証明できるような書類と一緒に、加害者の住所を管轄する裁判所へ提出。書類が受理され、加害者側に訴状が届けられると裁判が始まります。
民事訴訟は弁護士に依頼をすれば起こすことが可能ですが、こちらも先ほどの消費者団体訴訟制度と同じく、相手側の住所や素性がはっきりしていないと訴訟を起こすことができません。
まずは弁護士に訴訟の可能性について相談するのがよいでしょう。
最寄の
法テラスを利用することで、収入・資産が一定の基準以下の場合は無料での法律相談をしてもらうことができます。
詳しくは下記も参考にしてみてください。
③少額の場合は集団訴訟を検討する
集団訴訟は、同じ詐欺にあった人たちと協力して訴訟を起こす方法です。
主なメリットは下記の2つ。
- 費用を分担できる
集団訴訟では、弁護士費用など裁判にかかる費用を全員でまかなうことができます。個人で訴訟を起こした場合、おおよそ約20万円程度のお金を事前に支払わなければなりません。
集団訴訟で被害者が多く集まれば、この費用を参加者全員で分担し、ひとりあたりの負担額を軽くできる可能性があります。
- 証拠を共有できる
集団訴訟の場合、被害者ひとりひとりの証拠を、全員に共通する証拠と扱えることがあります。
たとえば、加害者とのやりとりがどのようなものだったのか証明できる証拠をAさんが持っていなかったとしても、Bさんが加害者とのやりとりを録音した音声データを持っていれば、参加者全員が「同じ手口で詐欺被害にあった」と主張することができ、裁判を有利に進められます。
被害者どうしで情報提供をすることにより相手の住所等が明らかとなり、訴訟を起こすことができる……という可能性もゼロではありません。また、多くの被害者がいる事実がわかることで、警察なども捜査に動きやすくなります。
集団訴訟のそのほかのメリットについては、下記を参照してください。
4.まとめ
- 振り込め詐欺救済法を利用する場合は、警察と金融機関にすぐに連絡をしよう。
- 申請後、実際に支払いを受けるときにも手続きが必要。申請期限が決まっているので、忘れずに申し込もう。
- 振り込め詐欺救済法以外にも、消費者団体に代理として訴訟をしてもらう消費者団体訴訟制度や、被害者どうしで協力して訴訟を起こす集団訴訟などの方法がある。
おわりに
振り込め詐欺救済法を利用する際は、素早い行動が鍵。
加害者が口座からお金を引き出してしまう前に動くことで、お金が戻ってくる可能性は高まります。
まずは振り込んでしまった口座のある銀行に連絡するところからはじめてみましょう。