この記事は以下の人に向けて書いています。
- 犯罪被害にあい、被害届を提出したい人
- 被害届を提出しに行ったが、受理してもらえなかった人
- 被害届を提出した後の流れについて知りたい人
はじめに
被害届とは、犯罪に巻き込まれたことを警察に伝え、捜査をするかどうかの判断材料としてもらうための書類のことです。
しかし詐欺など被害実態の見えにくい犯罪の場合、被害届の内容によっては単なる個人間のトラブルとみなされてしまうことも。被害の内容や経緯をしっかりと説明することが重要です。
そこでこの記事では、被害届の書き方と、警察に受理してもらうために意識しておきたいポイントについて、詳しく解説していきましょう。
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1.どんな情報が必要?被害届を出すまでの流れと注意点
被害届とは、犯罪の被害にあったことを警察に知らせるための書類のことです。
警察はすべての事件を知っているわけではないので、被害にあった当事者が「こういう被害にあったので捜査してほしい」と伝える必要があります。その役割を果たすのが被害届となります。
そのため、被害届は原則として、
被害を受けた本人か、その法定代理人(親権者や後見人)が提出しなくてはいけません。
この章では、被害届に書く必要のある内容やその後のステップについて解説していきます。
①被害届にはどんな情報が必要?書くべき内容や提出後の流れを解説
被害届に書く内容は犯罪の内容に応じて異なりますが、いずれの場合でも以下の内容は必須項目となります。
・被害者の住居、職業、氏名、年齢
・被害の年月日時
・被害の場所
・被害の模様
・被害金額(品名、数量、時価、特徴、所有者)
・犯人の住居、氏名又は通称、人相、着衣、特徴等
・遺留品その他参考となるべき事項
参考:
別記様式第6号(犯罪捜査規範第61条)
警察署に行く前に、これらの情報をあらかじめ整理しておきましょう。
ただ、これだけの情報では、内容としては足りない場合があります。
事前に警察に問い合わせて事情を説明し、どんなものが必要なのか聞いておいたほうが確実でしょう。
また、被害届が不受理となる理由やその対処法についても後半で解説していますので、そちらも参考にしてみてください。
②受理しても捜査されない可能性も…被害届を提出した後の流れは
被害届が受理された場合、その後はどんなことが起こるのでしょうか。
パターンとしては、以下のふたつが考えられます。
- 被害届の内容に基づいて事情聴取などを行い、捜査を開始する
- 捜査を行わずに放置する
実は、
被害届の効果は法律できちんと定められているわけではありません。
そのため受け取った側が必ず捜査をする義務はなく、受け取った担当の判断に左右されてしまいます。
しかし、だからといって被害届がまったくの無意味と考えるのも間違いです。
その場では捜査が開始されなかった場合でも、振り込め詐欺などのように、多数の被害者から被害届が提出された場合、警察が捜査を開始する場合もあります。
また被害届を提出した際の
届出受理番号は、あとで
損害保険を受け取る場合や、振り込め詐欺救済法を利用する場合などに必要となります。
いずれにせよ、警察に被害をきちんと伝えることが重要となります。
もし捜査が始まるとなった場合は、
事情聴取や証拠品の提出、実況見分(犯行現場の再現)などを経て、捜査が開始されます。
警察の指示に従い、捜査に協力しましょう。
③安易な取り下げはNG!被害届を出す場合の注意点
被害届を受理してもらった後にも、注意しておきたいポイントがいくつかあります。
- 取り下げは安易に行わない
被害届は取り下げることもできます。
たとえば、犯人が被害を賠償するなどして被害が回復した場合や、犯人そのものが別人だった場合などは、取り下げを行う形となります。
しかし、だからといって安易に取り下げるのは禁物。一度取り下げた被害届を再度提出した場合、受理される可能性がとても低いからです。
特に詐欺などの被害を受けた場合、相手側から「返金する・弁償する代わりに被害届を取り下げてほしい」と持ちかけられるケースがあります。
取り下げた瞬間に連絡がとれなくなり、被害届も受理されなくなった……という場合を避けるため、実際に返金などが確認されるまでは、取り下げを行わないようにしたほうが安全でしょう。
- すぐ捜査が開始されるとは限らない
前項でも書いたとおり、被害届を受理した事件を捜査するかどうかは、警察側の判断に委ねられます。そのため、事件の重要性や緊急性によって、捜査開始までに時間を要する場合があります。
たとえば、住んでいる地域で誘拐事件や殺人事件が起きた場合、事件の早期解決が求められるでしょう。そのため、相対的に万引きや器物損壊などの事件捜査の優先順位は低くなってしまいがちです。
また詐欺などのように、被害が複数の都道府県にわたる場合も、動き出しに時間がかかる場合があるでしょう。
- 被害届に虚偽の事実を記載しない
他人を逮捕させることを目的に、故意に嘘の被害届を提出したり、存在しない被害を訴えた場合は、虚偽告訴罪などに問われる場合があります。
当たり前のことですが、被害届を提出するのは、本当に被害を受けている場合のみにとどめましょう。
被害届に書く内容や流れなどについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
いっぽうで、状況により
実際には被害届が受理されない場合もあります。
そんなときはどうすればいいのか、次章では不受理の理由と対処法について解説をしていきます。
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2.被害届が受理されない原因は?3つのポイントと対処法
原則として、警察は提出された被害届を必ず受理しなければならないと法律で定められています。が、実際には被害届が受理されない場合があります。
そのおおまかな理由としては、下記の3つがあげられます。
①民事事件として扱うべきと判断された場合
②犯人の特定が非常に困難である場合
③被害が軽く、また被害から時間が経っている場合
以下、くわしく解説していきましょう。
①民事事件として扱うべきと判断された場合
警察は基本的に刑事事件のみを扱い、契約上のトラブルといった民事事件については介入しないという原則があります(
民事不介入の原則)。
そのため、たとえば詐欺などの契約上のトラブルや、家族間での揉め事といった場合には、警察で解決すべきではないものとして被害届を受理してもらえないことがあるのです。
刑事事件だと判断してもらうためには、相手の行為が刑事事件となりうることを説明する必要があります。
被害届を書くときは下記の点に注意しながら、情報を整理するようにしましょう。
- いつ・どこで・どんなことがあったのか?
時系列などをまとめ、わかりやすく説明できるようにしましょう。相手とのやりとりや、詐欺事件の場合は相手と交わした契約書や書類などもまとめておくとより効果的です。
- どのような・どれだけ(金額)の被害を受けたのか?
身体的な被害を受けた場合は病院などの診断書、金銭的な被害の場合はできればその金額がわかる資料を用意しておきましょう。
- 同じ被害を受けた被害者がどのくらいいるのか?
自分ひとりが受けた被害が小さくても、被害者が多ければ事件性が高いとみなされる場合もあります。もし被害者がほかにも多数いる場合は、全員で協力し、被害届けを提出するようにしましょう。
また、被害額や被害者が多数の場合は、集団訴訟という手段をとることも可能です。
②犯人の特定が非常に難しい場合
海外サイトなどを通じた詐欺被害などの場合、犯人の特定が難しい場合があります。
特にネットを通じてやりとりしていた場合、相手の顔も住所もまったくわからない場合が大半です。こうした場合も、受理をしてもらいづらい場合があります。
ただし、こちらも①と同様に、被害額が大きかったり、被害者の人数が多い場合は、悪質な詐欺事件として積極的に捜査してくれる可能性が高まります。
③被害が軽く、また被害から時間が経っている場合
たとえば、かなり昔に数百円の被害を受けたという場合は、
- 被害が少なすぎるため、別の重要事件が優先される
- 時間が立っている場合は一般的に証拠が見つかりづらい
といった理由から、被害届を受理してもらえないおそれがあります。
また、刑事事件には、検察が起訴できる制限時間である「
公訴時効」があります。公訴時効を過ぎてしまうと刑事裁判を起こせなくなるため、被害届は受理されません。
たとえば
詐欺事件のの公訴時効は7年。つまり、7年以上前の詐欺事件は起訴できないことになります。
ただし、
公訴時効は犯人が海外に滞在している間は時効期間の経過が停止します。たとえば詐欺事件の犯人が1年間海外に滞在していた場合、その間は時効が停止していたとみなされ、事件が起きてから8年が実際の公訴時効となるのです。
また殺人罪、強盗致死、強盗・強制性交致死などの罪については、
例外的に公訴時効そのものが存在しません。
いずれにせよ、多くの被害は時間がたつと時効が成立してしまうため、なるべくすみやかに被害届を提出したほうがよいでしょう。
いかがでしたでしょうか。
被害届けを提出する前に、これらの要素をよく吟味することで、被害届も受領されやすくなるでしょう。また同時に、「これは本当に被害届を出すべきものか」ということを考えてもよいかもしれません。
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3.困ったときはまずここに連絡!相談先3つ
被害届の受理されるかどうかの判断や、どんな情報が必要になるかといった情報については、事前に専門機関へ相談することで、より詳しい情報を知ることができます。
どの窓口に相談するときも、経緯や手口を時系列順にまとめた資料や、関係する証拠などを手元に用意しておきましょう。
①警察相談専用電話に連絡する
警察には、事件や事故を通報する110番だけでなく、一般市民からのトラブル相談を受け付ける電話相談窓口「#9110」があります。専門の相談員が、相談内容に応じたアドバイスや、適切な関係機関の紹介を行ってくれます。
電話番号:#9110
受付時間:平日:8時30分~17時15分
(※地域により異なる)
②消費者ホットラインに連絡する
全国829か所の消費生活相談窓口につながるホットラインです。局番なしの「188」に電話し、音声ガイダンスに従うことで、最寄りの窓口に相談することができます。消費者問題について専門的なアドバイスや関係機関の紹介だけでなく、相手方との交渉を行ってくれる場合もあります。
電話番号:188
受付時間:各地の消費相談窓口によって異なる
③弁護士に相談する
被害届を提出するときに特に苦労するのは、「こういう法律に違反しているのでこういう犯罪にあたる」と、法律の観点から説明することです。
弁護士に相談することで、適切な書き方のレクチャーや、法的な解釈を聞くことができます。場合によっては、被害届の提出に同席してくれる場合もあります。
また、詐欺事件などの場合、相手が逮捕されても、とられたお金は戻ってきません。
返金を請求するためには、民事訴訟による損害賠償請求を起こす必要があります。
その際にも、あらかじめ弁護士に頼んでおくと心強いでしょう。
ただし、弁護士への依頼にはお金がかかりますので、その点は注意が必要です。
お金がないという人は
法テラスなどで無料相談を受け付けていますので、そちらを利用するのもよいでしょう。
4.まとめ
- 被害届は警察に捜査してもらうために提出する書類だが、場合によっては受理されない場合もある。
- 被害届が受理されない理由として、①民事事件として扱うべきと判断された場合、②犯人の特定が非常に困難な場合、③被害が軽く、また時間が経過しすぎていた場合、などがある。
- 被害届を書くときに困ったら、①警察相談専用電話「#9110」②消費者ホットライン「188」③弁護士に相談するとよい。
おわりに
犯罪の被害を通報することは、あなただけでなく、他の被害者たちを結果として救うことにもなります。泣き寝入りをせず、被害を報告するようにしてください。