学校での体罰禁止…法律ではどう決まっている?定義と相談窓口2つ!

このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿日時 2019年02月12日 19時18分
更新日時 2019年02月12日 19時58分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 自分や自分の子供が教師から体罰を受けている人

  • 体罰がどういう基準で違法となっているのか知りたい人

  • 体罰があった場合にどうすればよいのか知りたい人

はじめに

2019年1月、東京都町田市の高校教師が生徒に暴力を振るう様子を撮影した動画がSNSで拡散され、ニュースとなりました。

のちに生徒側が挑発して暴力をふるわせようとしていたことなどが明らかとなりましたが、部活動での指導を含め、教師が生徒に体罰をふるうケースはあとを絶ちません。

体罰は、生徒の身体だけでなく心も傷つける行為。しかし「体罰はいけないものだ」と思いながらも「どこからが体罰か」と聞かれると、はっきりとは答えづらいのではないでしょうか。

この記事では法律で定められている体罰の定義や政府の参考例をもとに、どのようなケースが体罰にあたるのか詳しく解説しています。

体罰をした教師に対する処分内容や、被害を受けたときの対処法などもあわせて紹介しているので、あわせて参考としてみてください。

集団訴訟プラットフォームのenjinで被害を取り戻そう

証拠や費用をみんなでシェア。

無料登録する

1.体罰禁止の基準は?「学校教育法」から見る事例と基準



体罰は、学校教育法という法律により、明確に禁止されています。

この章では法律上の体罰の定義や文部科学省の指針をもとに、その判断基準となるものを紹介していきます。

①法律上の「体罰」の定義

  • そもそも体罰とは

    体罰とは教師から生徒に対し、肉体的苦痛を与える行為です。

    そのため「強く叩く」「殴る」「蹴る」といった直接的なものに限らず、「長時間正座をさせる」「罰としてランニングをさせる」といった間接的なものも体罰に含まれます。

  • 教育指導上による罰や、やむを得ない場合は該当しない

    ただしその一方で、学校教育法は生徒に罰を与える権利も定めています(学校教育法第11条)

    これは「注意」「叱責」「別室での指導」「宿題を増やす」「罰として掃除をさせる」といった行為のこと。これらに肉体的苦痛がない場合は教育するための行為として扱われ、体罰には該当しません。停学や退学といった処分もこれに含まれます。

②体罰かどうかの判定事例

では、具体的にはどんな行為が体罰となるのでしょうか。

文部科学省が提示している例を参考に、OKケースとNGケースの例をまとめてみました。

ただし、これらはあくまで例のひとつ。具体的な基準は個別の状況によって変わってくるので、参考とするにとどめてください。

OK NG
授業中ふざけた生徒を立たせる 授業中ふざけた生徒を床に長時間正座させる
授業中に立ち歩く生徒を叱って席に座らせる 授業中に立ち歩く生徒の頬をつねりながら、席に座らせる
集会で騒ぐ生徒の腕を掴んで外に連れ出す 集会で騒ぐ生徒を外に連れ出し、平手打ちをする
宿題を忘れた生徒に居残りをさせる 宿題を忘れた生徒に居残りをさせ、一切外出させない
他の生徒に暴言を吐く生徒の両肩を掴みながら説教する 他の生徒に暴言を吐く生徒を突き飛ばして転倒させる
参考:文部科学省「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」

集団訴訟プラットフォームのenjinで被害を取り戻そう

証拠や費用をみんなでシェア。

無料登録する


2.体罰を行った教員の処分は?2つのケース別に解説



体罰は学校教育法で禁止されているものなので、当然ながら体罰をした教師には法律や規則にもとづいて処分が下されます。実際にどのような処分内容なのか、この章で見ていきます。

また損害賠償の請求はできるのか、警察に逮捕をしてもらえるのかについてもご紹介します。

①教育基本法にもとづく懲戒処分

教師が体罰を行った場合、教育基本法にもとづいて懲戒が行われます。処分の基準は次のとおりです。
体罰の内容 処分の内容
体罰によって生徒を死なせたり、後遺症を負わせた場合 免職(職を辞めさせる)
常に体罰を行っていたり、体罰を隠そうとした場合 停職または減給
体罰を一度行った場合 戒告(言葉による注意)

なお教育職員免許法では、教員が懲戒免職を受けたとき教員免許が取り消されると定められています。

またこの基準は国家公務員である公立教師に適用されるものですが、私立の学校で決められている就業規則も公立の基準におおむね沿って決められるため、同様の基準で処分が下されると考えてよいでしょう。

②賠償請求や警察への通報はできる?

教育基本法にもとづく懲戒処分内容を見たときに、

「口頭注意だけなんて、処分が甘いのでは?」
「法律で禁止されているなら訴えたい!」

と思うかもしれません。

実際、学校外で酷い暴力をふるったのであれば、それは犯罪です。大けがしたのであれば損害賠償の対象となるのではないか…と考えるのが自然でしょう。

しかし、私立教師はともかくとして、公立教師個人に対して賠償請求をするのは難しいというのが実情なのです。

  • 訴える相手は「個人」ではなく「公共機関」

    公立教師は、扱いとしては公務員となります。そして公務員が起こした問題行為は「国家賠償法」という法律で、各都道府県などの公共機関が責任を持つ形となっています。

    そのため、被害者が公立教師に訴訟を起こそうとした場合は、県立高校であれば県、市立高校では市を相手に訴訟を起こさなくてはなりません。賠償が認められた場合も、公共機関から支払われる形となり、教師個人から請求することはできないのです。

    「損害賠償が認められたのちに、県や市が教師個人に一部を負担させることができる」というルールもあるのですが、この権利を公共団体が使わなければ、教師は実質損害賠償をしなくてもよいことになります。

    例外が、2009年に大分の高等学校剣道部で、生徒が熱中症で死亡したケース

    この事例では県に賠償金の支払いが命じられましたが、県側はそれを教師には負担させませんでした。それを受けた遺族側が「教師の過失が直接の原因にもかかわらず、賠償を教師本人に負担させないのはおかしい」として再度訴え、認められたものです。

    一方で、私立学校の教師の場合はこの国家賠償法が適用されないため、教師個人や学校に対して、訴訟を起こすことが可能です。

  • 悪質な体罰の場合は逮捕の可能性も

    体罰した教師を逮捕してもらいたい場合は、警察に体罰の事実を申告する刑事告訴をしますが、警察がなかなか動かないのが現状としてあります。

    これは警察の中で、教育上で起きたトラブルに関しては教育委員会を始めとする団体が解決するものであり、関わるべきではないとされているため。

    ただ絶対に刑事告訴ができないわけではなく、悪質な体罰をした教師が逮捕されている事例もあります。

    2012年に大阪の市立高校で体罰によって生徒が自殺した際には、大阪地検が元顧問教諭を傷害罪と暴行罪で在宅起訴。懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が言い渡されています。


集団訴訟プラットフォームのenjinで被害を取り戻そう

証拠や費用をみんなでシェア。

無料登録する

3.悪質な体罰があった場合の対処法と相談窓口



もし生徒が悪質な体罰を受けているとわかったら、これ以上被害にあわないように早めに対処することが大切です。

この章で有効な対処法やアドバイスをくれる相談窓口をご紹介しますので、解決の手立てにしてみてください。

①事前に集めておくべき証拠

対処法や窓口への相談をする前に、体罰に関する証拠を集めておきましょう。

  • 体罰があった日にちや体罰の実態を記したメモ
  • ほかの生徒による証言
  • 教師の発言などを残した録音データ
  • 怪我やうつになった場合は、治療の診断書や医薬品購入の領収書

それ以外に、体罰に関係がありそうなものはすべて取っておくようにしてください。

②まずは学校と教育委員会に調査を請求

証拠を揃えたら、学校と教育委員会(私立の場合は私立学校主管部課)に体罰の調査を請求します。

証拠が集まったからと言って、決して体罰をしている教師を問い詰めないようにしてください。本当のことを話してくれないばかりでなく、証拠を隠蔽しようとしたり体罰がエスカレートする可能性もあるためです。

学校と教育委員会に請求するときには、内容証明郵便で文書を送りましょう。内容証明郵便とは「いつ」「誰が」「どのような文章を」「誰に送ったのか」を日本郵便が証明してくれる特別な郵便で、こちらが調査依頼をした事実を証拠として残すことができます。

内容証明に記載するのは、

  • 体罰がどの法律に違反しているか(公立であれば学校教育法11条など)
  • どんなことを求めるか(体罰についての調査など)
  • 回答期限

などです。

書き終わったら最寄りの郵便局窓口から相手先に送付しましょう。

各都道府県の教育委員会や私立学校主管部課の住所は、文部科学省の一覧から確認できます。

公立の場合 都道府県教育委員会・政令指定都市教育委員会一覧
私立の場合 都道府県私立学校主管部課一覧

ただし、内容証明郵便は記載に細かくルールがあり、また訴訟の際に証拠として扱われることが多いため、個人よりは弁護士などの専門家に相談したほうが無難です。

内容証明の基本的な書き方などについては、下記でも詳しく説明しているので参考にしてください。



③いざというときの相談先

学校などに調査依頼をするのと並行して、次の相談先に連絡してみるのもいいでしょう。

  • 24時間子供SOSダイヤル

    全都道府県及び指定都市教育委員会が設けている窓口です。児童相談所や警察などさまざまな相談機関と連携協力しながら、体罰などで悩む保護者や生徒にアドバイスをしてくれます。

    電話番号 0120-0-78310
    受付時間 24時間(休日含む)


  • 子どもの人権110番

    法務省が設けている窓口で、体罰など生徒の人権問題に対する相談を受け付けています。保護者と生徒、どちらも利用可能です。

電話番号 0120-007-110
受付時間 平日8時30分~17時15分


4.まとめ

  • 体罰は学校教育法によって明確に禁止されている。肉体的な苦痛がある場合は、体罰の可能性が高いと判断しよう。

  • 体罰をした教師が訴えられたり罰せられることはケースとしては少ないが、悪質な場合は一部例外として認められる場合もある。

  • 体罰を認識したらすぐに証拠を集めて、学校や教育委員会(都道府県私立学校主管部課一覧)に調査依頼を。

おわりに

教師から体罰を受けてしまうと、心に深い傷を負ってしまい、不登校などにつながる可能性もあります。 万が一発覚した場合は、早急な解決のために行動することはもちろんのこと、子供の心のケアをしてあげることも大切です。
このエントリーをはてなブックマークに追加