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パワハラの定義を解説!適切な指導をするための3つのコツと訴訟事例

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投稿日時 2018年12月10日 12時35分
更新日時 2019年01月23日 19時25分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • どのような行為がパワハラになるのかを知りたい人

  • パワハラと一般的な指導との違いとの線引きを知りたい人

  • パワハラの訴訟事例について知りたい人

はじめに

新人を指導する際、時には厳しくしなければならない場面もでてきます。

一方で、年々パワハラ(パワーハラスメント)に対する目は厳しくなっています。「この発言は大丈夫だろうか」と不安になる人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、パワハラの定義を紹介するとともに、一般的な指導とパワハラの違いについて見ていきます。訴訟事例も紹介していますので、あわせてパワハラについて理解を深める参考としてください。


1.「仕事の範囲を超えて苦痛を与える」とパワハラ!基本的な3つの定義



①パワハラの定義と具体例

パワハラの定義は、厚生労働省によって定められており、訴訟でパワハラが認定されるかどうかも、原則としてこの基準にもとづいて行われます。

どんな行為がパワハラとなるのか…という基準は主に3点。それぞれ内容と具体例を紹介しましょう。

  • 精神的・身体的な苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為

    暴力をふるう、暴言を繰り返す、あからさまに無視をするといった、特定の個人にストレスを与える行為のことです。

  • 職場内の地位や人間関係を利用した行為であること

    先輩・後輩、上司・部下といった力関係を背景に、相手に何かを強要することです。明らかに多い仕事を押し付けたり、逆に仕事を取り上げたりといった行為があたります。

  • 仕事で必要な範囲を超えた行為であること

    仕事で必要な範囲を超えた行為であることがこれにあたります。プライベートな用事を命じたり、逆に仕事と関係のないプライバシーを執拗に詮索する行為もこれにあたります。

パワハラ訴訟においては、相手の行為がこのすべてを満たすものであるかどうかが一つの指標となります。

②どんな言動がパワハラ?具体的な6つの行為

では、具体的にはどんな行動がパワハラになるのでしょうか。厚生労働省は、パワハラの種類を6つの類型に分けています。それぞれの特徴を下記の表にまとめました。

名称 特徴
①身体的な攻撃 頭を叩く、胸倉をつかむ、肩を力任せに押す
ペンやゴミを投げつける
②精神的な攻撃 「バカ」「給料泥棒」と暴言を吐く
相手の目の前で机を叩いて恐怖心を煽る
③人間関係からの切り離し 周囲の人間とコミュニケーションが取れないように、別室に隔離して作業を命じる
同僚がいる前で大声で怒鳴りつけ、「仕事ができない人」と思わせる
④過大な要求 他の人の仕事を意図的に回し、残業をさせる
明らかに能力不足の仕事を与える
⑤過小な要求 経験豊富で本人にもやる気があることを知りながら、プロジェクトや打ち合わせに参加させない
書類のコピーなどの単純作業ばかり命じる
⑥個の侵害 私物の写真撮影
交際関係や休日の過ごし方の説明を求める
(参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」)

より詳しい特徴については、下記の記事で紹介していますので、参考にしてください。



③モラハラ・パワハラ・セクハラ、それぞれどう違う?

職場ではパワハラ以外にも、モラハラやセクハラといった問題があります。

これらの問題とパワハラには、どのような違いがあるのでしょうか。
  • モラハラ
  • セクハラ
  • その他のハラスメント

について、解説をしていきます。

  • モラハラ(モラル・ハラスメント)

    独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、モラハラは
    「言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」
    と定義され、「いじめ」に近い概念とも言われています。

    パワハラと似ていますが、上下関係を利用したものではないことが特徴。そのため、部下から上司、あるいは同僚どうしでも起こり得るとされるほか、職場に限らず家族や友人間でも起きることがあります。

    また、暴力や暴言といったわかりやすい行為ではないため、パワハラと比べて加害者の自覚が薄いことも特徴。指導や教育だと思っていたことがモラハラになっていた、というケースが多く見られます。

    モラハラについては下記の記事も参照してください。


  • セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)

    セクハラは、職場で起こる性的な嫌がらせのことです。直接身体を触る行動だけでなく、言葉による嫌がらせも含んでいます。

    例をあげると、「仕事のミスの対価として身体の関係を求める、「女性はこれだから」と性別を理由に叱責する、「若い子はいいね」「綺麗な子は違うね」など容姿や年齢をあげつらうといった行為が該当します。

    またモラハラと同じく、こちらも加害者側の認識が薄い点が特徴で、問題発覚後も「そんなつもりはなかった」「スキンシップのつもりだった」「同意の上だった」などといった発言をしてしまいがち。

    近年ではたとえ合意があった場合でも、「職場の人間関係を保つためにやむをえない行為だった」として、セクハラが認められたケースが増えてきています。

    詳しくは下記の記事を参考にしてみてください。


  • その他のハラスメント

    他にも、職場に関連するものでは、次のようなハラスメントがあります。

    リスハラ リストラハラスメント。リストラ対象者に仕事を辞めるよう圧力をかける嫌がらせです。
    ブラハラ ブラッドタイプハラスメント。血液型によって性格や行動を決めつけ、注意したりいじめたりするハラスメントです。
    ソーハラ ソーシャルネットワークハラスメント。TwitterやFacebookなどのSNSに関するハラスメントです。いいねを強要する、同僚・部下の投稿内容を職場で大っぴらに話すなどといった行為が該当します。


2.「パワハラ」と「指導」の違いをチェック!



これまで、パワハラの定義や特徴を解説してきました。

しかし一方で、部下や後輩に指導が必要となる場面は必ず出てきます。その際にパワハラと判断されないためには、どうすればよいのでしょうか。

この章では「パワハラ」と「指導」の違いを解説し、指導がパワハラとみられないための方法を紹介していきます。

①相手のミスを注意する際のコツ

相手のミスを注意する際には、「問題点」「問題の理由」「解決のためにすべきこと」をわかりやすく簡潔に伝えましょう。

たとえば、部下が作成した企画書に添付するべきデータが足りない場合は、

・データが足りないことを伝える(問題点)
・データが不足していると客観性に欠け、企画書に説得力が生まれない(問題の理由)
・類似の企画書を見せ、参考にするよう伝える(解決のためにすべきこと)

といった形で指導を行うようにしましょう。

②段階を踏んで教えること

一度に多すぎる内容を教えていませんか?

不慣れなうちに大量の情報を詰め込まれると、混乱してしまうもの。

段階を踏んだ教え方になっているかどうか、一度見直してみましょう。

  • 業務を段階別に分割する

    一連の業務内容を、もういちど細かく段階別に分けてみましょう。

    自分は当たり前のようにできる業務内容も、新人にとっては難しい場合があります。

    覚えるべき業務の範囲を分けることで、相手はいま何に集中するべきなのかがわかりやすくなります。
    例えば営業であれば、「顧客にアポイントを取る」「名刺を交換し、世間話をする」「商品について基本的な説明をする」「商品を売り込む」「次回の打ち合わせ日を決める」「帰社後に挨拶のメールを送る」といったステップに分解できるでしょう。

  • どこまでを任せ、どこから自分が引き上げるかを決める

    ステップの分解が終わったら、まずはそのうちのどこを相手に任せるかを決めます。先ほどの営業の例であれば、「商品について基本的な説明をする」ことは相手に任せ、それ以外の先方とのコミュニケーションは自分で行う、という形です。

    仕事に慣れていない人にとって、指導してくれる人は助け舟のような存在。どの部分からフォローをしてくれるのかがわかると、冷静に任せられた仕事に取り組めます。

    この役割分担は、新しい仕事を教えるたびに伝えてください。

  • 任せる範囲以外の部分についてはミスしても怒らない

    商談中に先方から急に話題が振られた際に、仕事に慣れていない人だとうまく答えられないかもしれません。ですが「商品を先方に紹介する」以外のミスについては、「あれじゃダメだ!」と叱責をしないようにします。

    「教わってないし…」と反発を覚えたり、余計なことはしないほうが賢明だと考えてしまうからです。反対に、任せた部分についてうまくこなせた場合は褒めてあげましょう。

③やり方や方法を変えながら根気強く教える

仕事に慣れていないと一言で言っても、人によって能力差があります。

何度も同じポイントで間違えてしまう人がいるかもしれません。しかしそこで苛立つ気持ちをぶつけても相手は萎縮するだけ。ミスをしても、「問題の理由」を含めて根気強く教えてあげてください。

言葉で伝えても成長につながらない場合は、マニュアルやチェックリストを作るなど教え方を変えてみましょう。任せる業務の範囲をさらに細かく切り分け、調整するのもひとつの手です。

「何をしようと思っているのか」「何に迷っているのか」「何が不安なのか」はひとりひとりまったく違います。指導では相手の気持ちと考えを尊重し、できる限りフォローしていくのが大切です。


3.実際に訴えられたらどうなる?パワハラ訴訟事例3つ



最後に、パワハラの訴訟事例を3つご紹介します。どのような場合に訴えられるのか、賠償金額はいくらくらいになるのかなどの参考にしてください。

①丸刈りや高圧洗浄機による水かけ、その様子の写真をブログに掲載

(出典:日経新聞「丸刈りパワハラに賠償命令 福岡の運送会社」)

  • 概要

    福岡の運送会社に勤務するトラック運転手の男性(40)が、会社の戻りが遅かったことに腹を立てた経営者らに丸刈りにされた上、洗車用の高圧洗浄機で水をかけられるパワハラを受けたとして、会社側に損害賠償を請求。

  • 結果

    判決で福岡地裁は、未払い賃金の支払いやパワハラの様子を撮影した写真をブログに掲載した点など含めて、約1500万円の支払いを会社側に命じた。運送会社は不当な判決だと主張し、控訴審で徹底的に争うとコメントを出している。

  • 問題となったポイント

    福岡地裁はこのパワハラに対して「人格権を侵害している」と判断しました。発端が経営者らの個人的な感情に基づいていること、明らかに度を超えた身体的・精神的な攻撃が行われたことが問題となっています。

②恐怖感を与える指導と過重な勉強時間で自殺、パワハラとの因果関係を認定

(出典:産経新聞「学習45時間→70時間…実習先でパワハラ自殺、学校側に全額6100万円賠償を命令 大阪地裁」)

  • 概要

    理学療法士の養成学校に通っていた男性(当時39歳)が、実習先の診療所でのパワハラを苦に自殺。男性は指導担当の理学療法士から繰り返し強い口調で叱責を受けており、勉強時間も1週間70時間と厚生労働省の指導要領が定める45時間を大きく超えていた。
    男性の妻が学校と診療所を運営する医療法人を相手取り、約6100万円の損害賠償請求を起こした。

  • 結果

    大阪地裁は学校と診療所の安全配慮義務違反を指摘し、「違法な指導で病的な精神状態になった」とパワハラと自殺との因果関係を認定。原告に全額支払うように命じた。

  • 問題となったポイント

    今回の訴訟で、男性が自殺する前にパワハラをうかがわせるメールを教員が受け取っていたことも明らかにされました。また以前にも同様に自殺した事案があったことから、大阪地裁は学校側は過度な指導で自殺に至る場合があると認識していた、と言及しています。
    指導担当によるパワハラはもちろん、環境改善を怠った学校や診療所に責任があるのは一目瞭然です。

③パワハラ発言で退職、間接的な被害も

(出典:日経新聞「パワハラ発言、間接被害も認定 会社側敗訴が確定」)

  • 概要

    医療機器メーカーで働いていた女性4人が、当時の代表取締役からパワハラを受けたとして損害賠償を請求。

  • 結果

    東京高裁の一審・二審ともに、「給与が高すぎ、50代は会社にとって有用ではない」など原告2人に対する男性の発言がパワハラに該当すると認定。また別の原告2人が、男性の発言を見聞きしたことによって退職せざるを得なくなったことも認めた。最高裁が会社側の上告を退け、会社と男性に計約660万円の支払いを命じた。

  • 問題となったポイント

    今回訴えられた男性は、代表取締役就任直後からパワハラ発言を繰り返していました。本人に直接言わずとも間接的な被害者を生んでしまったのは、常日頃から職場環境を乱していた結果と言えます。

パワハラによって身体・精神に大きな傷を受けたり、退職に追い込まれたような場合、慰謝料を含めた損害賠償は高くなる傾向にあります。


4.まとめ

  • 自分の言動がパワハラなのか判断するために、まずは定義を知ろう

  • セクハラやモラハラではないかチェックしよう

  • 相手を尊重する気持ちを持って、正しい指導方法を

おわりに

上の立場になるほど、指導をしなければいけない機会は増えるもの。しかし一方で、パワハラに怯えて相手に遠慮がちな指導になってしまえば、それも結局は会社に不利益をもたらす結果になってしまいます。

お互いが気持ち良く働くために、パワハラの定義を理解して適切な指導方法を身につけていきましょう。


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