パート勤務でも有給休暇は取れる!日数や注意点などの3つを徹底解説

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投稿日時 2019年03月04日 19時14分
更新日時 2019年03月04日 21時07分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • パート勤務で休みを取りたいが、勤務先から「正社員じゃないと有給はない」と言われてしまった人

  • パートでも有給が取れると聞いたことがあるけど、自分は取れるのか気になっている人

  • パートだから有給を取れないのはおかしいと思うけれど、勤務先を説得できない人

はじめに

パートタイマーであるがゆえに、これまで有給休暇を取れなかった……という経験はありませんか。

実は就労期間など一定の条件を満たせば、パート勤務でも有給休暇が発生することは意外と知られていません。もし、雇用形態を理由に今まで勤務先に有給取得を断られていたとしたら、違法である可能性があります。

また2019年4月からは、年次有給休暇を年5日、確実に消化しなければないルールが新たに施行されることになりました。これまで知らずに関係ないと思っていた有給について、突然考えなければならなくなる人も出てくるかもしれません。

この記事では、パート勤務の人の有給休暇について詳しく説明していきます。


1.パートは有給を取得可能!ひと目でわかる自分の休暇日数



年次有給休暇制度は、仕事を休んでも減給はなく、給与を支払われる休暇です。

パート勤務でも有給が取れることはなんとなくわかったけれど、何日くらい貰えるのか、休んだ分の賃金はどう計算されるのかは気になるところ。

ここがすっきりしないと、安心して休暇を取りづらくなってしまいます。

まずはこの部分を解説していきましょう。

①何年働けば何日もらえる?自分の有給日数を確かめよう

まず「パートタイム労働者」とは、「同じ勤務先に雇われていて、週の労働時間がいわゆる正社員より短い労働者」と厚生労働省が定義しています。

「アルバイト」など勤務先によって呼び名が変わるかもしれませんが、この条件に当てはまる人は「パート」となります。

また、有給休暇の発生条件は「入社日から半年間継続して、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与する」こと。以後は1年のうち8割出勤していれば毎年休暇は増えていきます。

これらをまとめてみると、パート勤務者のうち、週の所定労働時間が30時間未満の場合は、勤続年数・週労働日数に応じて下記のように有給休暇が与えられることになっています。

  週1日
年48日~72日
週2日
年73日~120日
週3日
年121日~168日
週4日
年169日~216日
半年 1日 3日 5日 7日
1年半 2日 4日 6日 8日
2年半 2日 4日 6日 9日
3年半 2日 5日 8日 10日
4年半 3日 6日 9日 12日
5年半 3日 6日 10日 13日
6年半以上 3日 7日 11日 15日

出典: 厚生労働省

しかし一方で、雇用形態が「パート」でも、正社員並みの労働時間で働いている人はどうなるのでしょうか。

  • 週の所定労働日数が5日以上
  • 週の所定労働時間が30時間以上
  • 1年間の所定労働日数が217日以上

に当てはまる場合は、下記の通りです。日数の上限は20日です。

勤続年数 有給休暇日数
半年 10日
1年半 11日
2年半 12日
3年半 14日
4年半 16日
5年半 18日
6年半以上 20日

出典: 厚生労働省

②有給休暇中に支払われる賃金は?

有給休暇を取れることはわかりました。それでは、休暇中の賃金はいくら発生するのでしょうか。

具体的には

  • 過去3ヶ月間における平均から算出した1日当たりの賃金(主にアルバイトに適用)
  • 所定労働時間分を働いた場合に支払われる賃金(主にパートに適用)
  • 健康保険法から算出する標準報酬日額

のいずれかから計算します。

パートの場合は、一般的に「1日分の給与」と考えておけばおおむね問題はないでしょう。

  • 健康保険の標準報酬日額とは

    この金額を有給休暇の賃金として採用するには、事前の労使協定が必要ですので、入社した際の雇用契約等を確認してみましょう。

    標準報酬日額は、社会保険料支払いの基準として、雇用されたときや給与額の改定時に決定するか、または毎年4~6月の平均給与額を算出し、その年の9月から次の年の8月まで適用するものです。

    都道府県ごとに金額による等級が決められているため、自分の自宅ではなく勤務先の都道府県で等級を確認する必要があります。

③年5日は必ず有給取得を、2019年4月から

2019年4月から、「働き方改革」の一環で、年10日以上の有給休暇が与えらえる労働者は、このうち5日について、勤務先が時季を指定して休ませることが義務付けられるようになりました。

過労死などが問題視される社会情勢や、休みを取りづらい、周囲の視線が気になるなどの理由で全国的に年休消化率が悪いことが考慮された結果で、労働者の心身のリフレッシュを促すねらいがあります。

上で説明した表では、週4日なら3年半以上、週3日から5年半以上勤務した人から該当することになります。長期で同じ場所にずっと勤務している人は、自分にも当てはまるかどうかを確かめ、勤務先にも打診しておきましょう。

これらのパート勤務の条件は、ほぼアルバイトと同じになります。こちらも参考にしてみてください。



2.こう返そう!有給取得を勤務先が認めてくれないときのありがちワード6選



パートは重要な即戦力です。ゆえに、特に忙しい職場では「有給を取りたいのですが……」と、ちょっと言い出しにくい雰囲気があるかもしれません。

勤務先の責任者自身がパートの有給について知識や理解がなかったり、嫌がらせをしてきたりするケースが発生したら、どうすればいいのでしょうか。

よく言われやすい断られ方、受けやすいケースについて、法律に基づいた理由から対処法を考えていきましょう。

①有給取得をしたら降格や減給など明らかな報復措置があった
②「パートに有給は認めない」と言われた
③「休みは認めないけれど、有給の買取はする」はOK?
④「去年の有給は繰り越せない」と言われたけど本当?
⑤「人手が足りないからダメ」と言われてしまった
⑥「なんのために休むの?」「そんな理由では有給は出せない」

①有給取得をしたら降格や減給など明らかな報復措置があった

企業が有給を申請した労働者に対し、給与を減らすなどの不利益な扱いをすることは労働基準法で禁じられています

勤務先から「有給を使って休んだのだから減給」など、あなたに対する不利益の因果関係を認める言動があれば、不法行為の証拠になりますので、労基署などへ早めに相談しましょう。

②「パートに有給は認めない」と言われた

これまで説明してきた通り、有給休暇は、勤続期間など一定の条件を満たした「労働者」に認められた権利です。

この「労働者」は雇用形態を問わないうえ、一事業者の判断でその権利を奪うことはできません。

「正社員じゃないからダメ」と言われて諦めるアルバイトやパートなど非正規雇用の従業員として働いている人もいるかもしれませんが、雇用形態によって禁じられているものではないので、申請はできます。

③「休みは認めないけれど、有給の買取はする」はOK?

原則的には禁止です。

なぜなら、休暇は「心身の健康のために休息を取ること」が目的であり、金銭の支払いで休息を奪うことになっては意味がなくなってしまうためです。

また、一部を買い上げる代わりに支給日数を減らすことも認められていません。

ただし、退職時に残ってしまった有給に応じた金銭の支払いをすることはできます。

④「去年の有給休暇は繰り越せない」

有給休暇の有効期限は2年です。したがって、前年分として発生した休暇は今年に繰り越すことができますが、前年にすでにその前の年の休暇を消化できていない場合は、そちらが消滅します。

③で説明した通り、原則的に買取はできないことになっていますので、なるべく休息として消化するようにしましょう。

⑤「人手が足りないからダメ」と言われた

結論から言えば、企業には「有給を与えない」という選択肢はないのですが、2つのケースが考えられます。どちらに当てはまるかで、対処が違ってきます。

  • 企業自体が小さく、人数が少ない

    労働者の有給休暇の発生や取得は、企業の従業員数に関係なく適用されるものです。企業が人数を理由に権利そのものを認めてくれないとなれば、違法になります。

  • 繁忙期に当たっている

    原則は労働者が求めた時期に取得できるようでなければなりません。 ただし、労働基準法で上では有給取得を申請した時期が事業の繁忙期に当たるなど、企業の正常な運営に支障があると判断されるときは、取得時期をずらして与えなくてはならないとされています。

⑥「なんのために休むの?」「そんな理由では有給は出せない」

有給休暇の取得について、「このような理由しか認められない」という規定を労働基準法が決めているわけではありません

これまでに最高裁判所では「休暇をどのように利用するかは労働者の自由であり、勤務先が干渉することは許されないのが、法律の趣旨としては妥当である」という考え方を示した(「年休自由利用の原則」が出された判例)があり、この考え方に基づくと「私用のため」や、理由を告げないで取得することは可能です。



3.それでも有給が取れなかったら…考えたい手段4つ



パートでも有給が取れることはわかったとはいえ、現実的には勤務先に対し、強い立場に出られる人ばかりではないでしょう。

様々な手段や交渉を試みたものの、どうしても有給休暇が認められなかった……という場合もあるかもしれません。

とはいえ、泣き寝入りするわけにもいきません。そのようなときはどうしたらいのでしょうか。主な相談先や手段をみていきましょう。

①証拠を集める

様々な相談先に足を運ぶ前に、まずはいったん冷静に自分自身の被害をまとめましょう。

不利益な扱いを受けてしまうと、どうしても感情的になりがち。ですが、どこに相談する場合も、客観的な証拠があり、話ができた方が理解を得られやすくなります。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 音声記録
  • メールなどの文書
  • チャット記録

などがあれば、準備をしておきましょう。

②労働基準監督署に訴える

労働問題を解決したいときは、まず自分の勤務先を管轄している労働基準監督署に相談しに行くのがいいでしょう。勤務先企業に対し、労働環境の是正勧告などが発生する場合があるからです。

各地の労働基準監督署は こちらです。
受付時間:月~金 8時30分~17時15分

  • 労働条件相談ほっとライン

    時間外労働や賃金、健康問題など労働に関する法律が絡む問題を相談できる窓口です。 専門の相談員が、法的観点からの解説や適切な公的機関の紹介などをしてくれるところです。

    電話:0120-811-610(はい!ろうどう)
    受付時間:月~金 17~22時・土日 9~21時


③労働組合(ユニオン)に相談する

労働組合(労組、ユニオン)は、労働者の様々な権利を守るために企業と交渉したり、申し入れなどを行ったりする団体です。

企業にもよりますが、社内に労組があるならまずそちらに相談をしてみましょう。ただし、名目上存在しているだけで活動実態があまりなかったりすることもあります。

そのような場合は外部のユニオンに相談をしてみましょう。 企業単位ではなく、業種別のほか、 パートや派遣など非正規雇用者向けのユニオン もありますので、話をしてみましょう。

ただし、ユニオンに加盟して解決を目指す場合は、弁護士への依頼のように手続きをプロに丸投げというわけにはいかず、自らが行動していく必要があります。

厚生労働省の「労働組合基礎調査」では、労組に加入しているパート勤務者は2018年に約130万人で、年々増加傾向です。

④弁護士に相談する

法律の観点から問題を解決するなら、プロである弁護士に依頼するのがいいでしょう。

「裁判沙汰にはしたくないんだけど……」という人もいるでしょうが、必ずしも訴訟という手段を取るわけではなく、それより前の段階の企業との交渉や、そのための書面の作成なども依頼することができます。

弁護士の探し方は、 日本弁護士連合会(日弁連)のサイトから探してみるのがいいでしょう。また、労働問題に強い弁護士を選ぶことも大切です。

    資金面に不安がある人は法テラス

    弁護士への相談と解決の着手以後は実費が発生するため、パート勤務者には負担が大きい場合があります。

    その際には、「法テラス」 の利用を検討しましょう。

    申込者および配偶者の収入額、家賃負担の有無、資産基準などで利用できるかどうかが決まります。

    申し込みには収入に関する審査もありますので、書類の準備も必要です。 法テラスの利用については、下記の記事でも解説しています。

  • 労働審判手続を利用する

    裁判所が手掛ける、裁判以外で労使問題を解決する手段です。労働審判員と裁判官、代理人が同席し、原則3回までの話し合いで解決することが可能です。3回目以降にどちらかから異議申し立てがあった場合は、訴訟手続きに入る可能性があります。

    ここでの代理人はあくまでも弁護士ですので、弁護士に依頼してからこの方法を検討するのがいいでしょう。また、申し立てた本人と企業側の担当者、少なくとも一度は顔を合わせて話をする必要があります。

  • パート仲間と一緒に行動を起こす

    勤務先のパートで有給休暇を取れなかったのはあなただけでしょうか。
    この場合は、同じような雇用形態や勤続年数でもやはり取得できなかった人を募り、勤務先に対して集団訴訟を起こすことができます。

    収入の面で不安がある人も少なくないでしょうが、集団訴訟は2人以上が一緒にひとつの相手を訴える仕組みなので、弁護士に依頼する際も費用を頭割りすることができ、1人で訴えるよりも費用の負担が軽くなります。

    また、証拠や証言についても1人のときより裏付けを強化できるので、訴えたい内容に説得力が増すのもポイントです。

    「やっぱり弱い立場なのだ」と諦めてしまう前に、弁護士に相談する際は賛同してくれそうな同僚を誘って行ってもいいでしょう。

4.まとめ

  • 「勤続半年以上、8割出勤」なら有給は発生しているはず。勤務先にも確認をしてみましょう。

  • 「有給休暇は認めない」と勤務先が言っても、きちんと理由をつけて反論は可能です。ただし、場合により時期をずらすなどの譲歩は必要です。

  • 弁護士の相談で、資金に不安があれば法テラスや仲間との集団訴訟を検討してみて下さい。

おわりに

勤続年数も長く、周囲から頼られるパート勤務者は少なくありません。しかし、有給休暇を取得するとなれば、勤務先との関係悪化を恐れて言い出せない人もいることでしょう。

自分のために仕事の休息を取ることは大事な権利です。まして、国が認めているものでもあるので、堂々と主張をしていきましょう。
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