「求人詐欺」の実態と対策まとめ!見破るための3ステップと相談窓口

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投稿日時 2019年02月05日 19時05分
更新日時 2019年02月05日 19時11分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 就職・転職したあとで事前の条件と違うことに気づいた人

  • 怪しい求人を見分ける方法について知りたい人

  • 悪質な求人にあったときの対処法を知りたいという人

はじめに

求人詐欺とは、給与条件や雇用形態などを誇張して求人を行うことを指します。

内定後、断れないタイミングで実際よりも低い条件を提示するといっただけでなく、本当の条件を説明しないまま契約させるというより悪質なパターンもあるようです。

2017年にハローワークに寄せられた相談件数は8507件。2016年と比べると減少傾向にあるものの依然として多く、またハローワーク以外の求人情報サイトを含めると、さらに多くの被害者が存在しているといえるでしょう。

この記事では、そんな求人詐欺の種類や、怪しい求人を見分ける方法について解説していきます。

もし被害にあった場合の対処法も紹介しますので、あわせて参考としてみてください。

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1.給与・残業・仕事内容…求人詐欺にありがちな4種類



求人詐欺で誇張される内容には、おおまかに以下のようなものがあります。


名目
給与に関するもの 求人で提示していた基本給より低い
勤務時間に関するもの 残業なしと書いてあったのに、毎月残業がある
勤務内容に関するもの 募集していた職種と全く異なる仕事をさせられる
勤務形態に関するもの 正社員採用のはずが、アルバイトや契約社員で雇用

以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。

①給与は残業代込み、ボーナスなし…給与に関する手口

特に多くみられるのが、給与に関するもの。基本給を固定残業代や各種手当込みで書き、基本給を実際よりも高く見せるといったものです。

よくありがちなケースが、固定残業制(みなし残業制)を基本給に含めるというもの。

固定残業制とは、あらかじめ一定時間分の残業手当を給与として支払うというもの。

残業時間に関わらずお金をもらえるのは一見得に見えますが、裏を返せば、そのぶんの残業代は支払われないということです。

つまり、低い基本給を固定残業代で高く見せているような求人は、残業を前提としたうえで基本給を低く設定しているといえるのです。

同じようなパターンとして、裁量労働制を悪用するパターンもあります。

裁量労働制とは、実際の勤務時間に関わらず、常に一定時間を働いたとみなすもので、みなし労働制とも呼ばれます。

たとえば「毎日8時間働いたとみなす」としていた場合、どれだけ残業しても残業時間としてカウントされません。これを悪用し、高い給与で採用したあとに残業代なしで長時間働かせるという手口がとられることがあります。

そのほか、

・ボーナス(賞与)込みの年収を求人に書きながら実際には支給しない
・営業手当や地域手当などを残業代の代わりとし、手当以上の残業をさせる
・「リーダー候補」「幹部候補生」など、管理職扱いで採用し残業代を払わない

といった手口があります。

②残業ナシと聞いていたのに…勤務時間に関する手口

残業時間や勤務時間が求人内容と明らかに異なっていた、というのも求人詐欺の手口のひとつです。

・残業なしと記載しながら、実際は毎日残業させる
・年休120日とあったのに実際は30日程度しかない
・10時~18時の勤務時間としながら、月の1/3以上が夜勤

といったパターンがこれにあたります。

繁忙期などを理由に長い時間拘束するだけでなく、有給休暇を取りにくくさせるというケースも多く見られます。

また朝礼や始業準備を名目に始業時間よりも30分前に出勤させ、その分の給与は出さないというのもありがちな手口です。

③事務職で入ったはずが営業に?仕事内容に関する手口

求人詐欺では、仕事内容の違いによるトラブルも少なくありません。

・事務職で求人しながら、営業に配属させる
・外勤と言いつつ、内勤をさせる
・書かれていた勤務地とは違う勤務地で働くように指示する

採用した直後や入社して早々にわかるときが多いですが、異動なしと言う謳い文句で求人した人に、何年も経ってから異動を命じる、といったケースもあります。

④使用期間はアルバイト⁉雇用形態に関する手口

雇用形態に関する手口の大半は、正社員募集と言いつつ実際は異なる雇用形態で働かせるというもの。安定した仕事に就きたいという心理を逆手に取った悪質な手口です。

・試用期間はアルバイトや契約社員などの有期雇用で、試用期間の終了に合わせて契約を終了させる
・実際は正社員採用ではなく、正社員になれる可能性ありという条件にしている

ほかに実際は正社員として雇わず社長や外交員など個人事業主扱いにして雇用保険や社会保険に加入させない、定年退職なしと言いながら65歳で退職させる、というパターンも存在します。

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2.求人詐欺を見抜け!入社前・入社後に行うべきチェック項目



求人詐欺は手口が多様化していて、なかなか気づきにくいもの。しかし詐欺だと気づいたときにある程度入社日数が経っていると、対処しづらいという部分もあります。

そのため入社前や、遅くとも入社直後に気づくことが大切になってきます。

この章で怪しい求人情報や会社の見分け方と、入社してからすぐに確認すべきことについてご紹介しましょう。

①応募時にはここをチェック!怪しい求人の見分け方

求人詐欺はこれまで明確に取り締まる法律がありませんでしたが、2017年の職業安定法改正により、2018年1月から下記の内容を明示するように義務付けられました。


項目 具体的な内容
固定残業制の有無 ・固定残業とみなす残業時間
・固定残業代の金額
・あらかじめ決めた時間以上の残業代を支払う旨の文言
裁量労働制の有無 ・働いたとみなす時間
各種手当の有無 ・手当の名目(営業手当、地域手当など)
・手当の金額
試用期間の有無 ・試用期間の有無
・試用期間と正社員で待遇が違う場合はその内容
雇用形態 ・正社員or契約社員or派遣労働者の明示

以上の内容がきちんと書かれているかどうかを確認し、かつ掲載が終了する前に、スクリーンショットなどで保存しておくとよいでしょう。

そのほかチェックしておくべき項目を下記にまとめました。

労働条件のチェック項目
給与の振れ幅 基本給の振れ幅が大きい場合、固定残業代や各種手当が組み込まれている場合が多い。
(例:基本給20~35万円)
週休の表示 週休2日とある場合、必ず週に2日休めるとは限らないことに注意。週2回休む場合は完全週休2日制という表記を探そう。
会社メッセージでのチェック項目
「アットホームな職場」 人間関係が良好なことをアピールする文言だが。実際には劣悪な可能性が高い。「やりがい」「感謝」といった言葉がよく出てくる場合も注意。
「残業が少なく、仕事とプライベートを両立できます」 一見魅力的に見えるが、具体的な残業時間が書けない場合のイメージ戦略である場合も。あくまで求人情報に書かれている残業時間を参考にしよう。
「20~30代の若手が活躍中」 長続きする人が少ない可能性がある。会社四季報などをチェックし、三年以内の離職率を確認しよう。
「未経験者歓迎!」 深刻な人材不足に陥っていて、長時間労働を強いられる可能性あり。同じく会社四季報などをあわせて確認しよう。

具体的な数字が少ない求人は、裏を返せば「数字として出せない情報がある」ということ。なんとなく聞こえのよい言葉に惑わされず、データをしっかりと見るようにしてください。

また2019年1月には、厚生労働省が今後、裁量労働制を不適切に運用している企業名を公表すと発表しています。(日本経済新聞「裁量労働制の違法適用 社名公表の基準決定 厚労省」)

今後同様の制度を利用している企業に応募する際には、あわせてチェックをするのもいいでしょう。

②面接時にはここを見るべし!怪しい会社の見分け方

次に面接時のチェックポイントをご紹介します。

面接官の対応 明らかに求人内容と異なる説明をしていないか。
給料や残業、休日、賞与などの質問に対して曖昧な返事をしていないか。
会社の雰囲気 社内に活気があるか。
働いている人の表情は明るいか。
会社の清潔度合 各社員のデスクは整理整頓されているか。
社内の隅にホコリは溜まっていないか。
トイレ掃除が行き届いているか。

これらの内容は、求人が怪しいかどうかということだけでなく、職場の雰囲気をよく知るうえでも重要です。

③入社後の「しまった!」はこう防げ!労働条件の確認法

もし採用が決まったあとも、事前に聞いた通りの条件であったかどうかをきちんと確認しましょう。

その際に重要となるのは「労働条件通知書」と「就業規則」です。

「労働条件通知書」とは、会社と労働者が雇用契約を結ぶ際に発行される書類のことで、「就業規則」は会社の従業員全員が守るべきルールを定めたものです。

これらを見比べて、

・労働条件通知書に書かれている給与や残業の有無が求人情報と異なっていないか

・労働条件通知書と就業規則の内容が著しく異なっていないか

・就業規則に明らかに労働者が不利となるような条件(罰金制度や給与の天引き)が記載されていないか

これらを確認し、気になる部分があれば安易に同意せず、速やかに上司や人事部に聞くようにしてください。

なお労働条件通知書と就業規則はどちらも入社後に確認するのが一般的となっていますが、内定通知書と一緒に送ってもらうよう求めることも可能です。

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3.もし求人詐欺にあったら…とるべき対応と相談窓口



もし、入社後にこれまで紹介してきたような被害があった場合は、速やかにしかるべき機関に相談してください。求人詐欺は罰則規定も定められている悪質な行為です。

この章では求人詐欺について相談できるさまざまな窓口を紹介していきます。

①困ったらここに相談!求人詐欺の窓口一覧

  • 都道府県労働局 需給調整事業関係業務担当窓口

    さまざまな労働に関するトラブルを扱う労働局のうち、特に求人などに関するものを扱う窓口となります。

    電話番号 こちらから最寄りの労働局の番号を探してください。
    受付時間 各都道府県によって異なります。

  • 日本労働弁護団ホットライン

    労働者の権利を守るために全国の弁護士によって結成された団体です。労働者の法律相談を受けたりアドバイスなどをしてくれます。

    電話番号 03-3251-5363 03-3251-5364(※5364は土曜非対応)
    受付時間 月・火・木15時~18時 土13時~16時

  • ハローワーク求人ホットライン(ハロワを経由して応募した場合のみ)

    ハローワークが設けている窓口です。紹介された求人票と実際の内容が違うときに申し出ることで、ハローワークが会社に改善要求をしてくれます。

    電話番号 03-6858-8609
    受付時間 平日8時30分~17時15分

②詐欺求人を個人で訴えることはできる?

もし、就職後に明らかにおかしな条件で働かされているような場合は、個人で会社を訴えることも可能です。

特に残業代の未払い、給与の天引き、理不尽な理由での解雇といった問題がある場合は、弁護士に相談してみましょう。

また、同じ会社内で複数の被害者がいる場合は、集団訴訟も方法のひとつ。

被害者が集まることで証拠を共有できるほか、場合によってはかかる費用を分担し、抑えられる可能性もあります。

実際に、2019年2月には、さまざまな名目での給与天引きが適切ではなかったとして、元保険外交員ら26人が未払い賃金を求める訴訟を起こしています。

もし「ひとりで訴えるのは荷が重い……」と感じている人は検討してみてください。


4.まとめ

  • 給料や残業の有無、雇用形態が求人情報と異なるのは法律違反。

  • 被害にあわないために求人情報や会社をチェック。入社したらすぐに労働条件通知書や就業規則に不当な箇所がないか確認を。

  • もし求人詐欺の被害にあったら専門機関に通報・相談を。あまりに悪質な契約である場合は個人で訴訟を起こすこともできる。

おわりに

求人詐欺の背景には、労働者の「ここで採用を断ったら後がない」という心理を巧みにつけこむ、悪質な企業の存在があります。

この記事で紹介し内容に注意し、詐欺求人を回避しましょう。


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