「みなし残業」とは?基本ルール&実は残業代が出る2つの例外ケース

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投稿日時 2018年11月20日 18時35分
更新日時 2019年04月25日 18時35分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 長時間の残業代があらかじめ給与に含まれている人

  • 残業の割に固定残業時間が少ないと感じている人

  • 「みなし残業代」の相場について基準を知りたい人

はじめに

みなし残業制(固定残業制)とは、一定時間分の残業代をあらかじめ給与の中に含める制度。たとえば「月給25万円(固定残業代4万円含む/20時間分)」といったかたちで給与を定める形です。

「うちはみなし残業制だから、残業時間が長いのに残業代が出ないんだよなあ…」

そんな風に思っている人は、少し注意してみましょう。みなし残業を違法に利用し、残業代を不当に安くしている会社も少なくないからです。

この記事では、みなし残業の仕組みや、違法なみなし残業の見分け方、違法なみなし残業をさせられていたときの対処法について解説します。

自分の会社が違法なケースに該当していないか、一度チェックしてみてください。


1.まずはここに注目!みなし残業の基本ルール4つ



会社がみなし残業制を導入するためには、法律で定められているみなし残業のルールを守る必要があります。具体的には以下の5つの条件を満たしていないと、みなし残業制を正しく導入しているとは認められません。

①残業時間と金額がきちんと明確になっている
②みなし残業の金額・時間が適正である
③みなし残業代を除いた基本給が適正である
④ほかの名目の手当てと一緒になっていない
⑤みなし残業時間を超える残業に対して残業代を支払っている

それぞれの条件について、詳しく説明していきます。

①残業時間と金額が明確になっている

みなし残業制では、毎月の給料の中で「残業時間とみなす時間」と「それに対する賃金」が明確になっていなければなりません。たとえば、以下のようなみなし残業制は全て違法です。

  • 月給25万円(時間外労働に対する手当も含む)
    みなし残業の時間数も、金額もわからないため違法です。

  • 基本給22万円、ただし固定残業代5万円を含む
    何時間分の残業がみなし残業となるのか不明なため違法です。

  • 月給20万円(ただし時間外手当45時間分を含む)
    月給のうちいくらがみなし残業時間なのかわからないため違法です。

また、みなし残業に関する取り決めは、会社の就業規則や労働者に渡す雇用条件通知書に明記することによって、労働者に周知されていなければなりません。みなし残業は雇用条件に大きく影響するため、口頭で労働者に伝えるだけでは不十分だからです。

みなし残業のルールが文書としてきちんと記載されていない場合も違法となります。

②みなし残業の金額・時間が適正である

みなし残業とされる残業時間と金額が明確に定められていても、その時間や金額自体が適正でないと、違法とみなされてしまいます。

  • みなし残業時間が月45時間を超えている場合は違法

    みなし残業時間が長すぎる会社は、労働者に長時間労働させることを前提としていると考えられます。そのため、設定されているみなし残業時間が異常に長い場合は、違法とみなされる可能性が高くなります。

    会社は36協定を結ぶことで、労働者に月45時間までは残業させることができます。みなし残業の場合も月45時間までは問題ありませんが、45時間を超えるみなし残業は違法と判断される可能性が高いです。みなし残業の上限時間を直接定めた法律はありませんが、実際に裁判で「月45時間を超えるみなし残業は無効」という判決が出た事例もあります。

  • みなし残業代が時給で計算した金額よりも低いと違法

    残業代は、基本的には基礎時給(月給から各種手当の金額を引き、1ヶ月の法定労働時間数で割った給料)から25%増の金額でなければなりません。

    みなし残業代もその制約をうけるため、1時間あたりのみなし残業代が基礎時給の1.25倍以上になっていない場合は違法とみなされることが多くなります。

    基礎時給や残業代の計算方法、割り増しのルールについては以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。




③みなし残業を除いた基本給が適正である

みなし残業制を導入している場合、月給から各種手当やみなし残業代を引いた金額が本来の基本給ということになります。その基本給が最低賃金よりも低い場合は違法です。

たとえば東京で働いていて、各種手当を除いた月給が20万円(ただしみなし残業代4万円/40時間分を含む)という人のケースで考えてみましょう。

みなし残業代を引くと、基本給は16万円です。

1日の所定労働時間が8時間で、1年に255日勤務しているとすると、月平均所定労働時間は

8時間×255日÷12ヶ月=170時間

です。

16万円を170時間で割ると、時給は約941円となります。2018年時点の東京都の最低賃金は985円ですので、このケースは最低賃金を下回っており違法となります。

みなし残業が導入されていると、見た目の月給が高いように見えるため、自分が実質的に最低賃金よりも安い給料で働かされていても気づきにくいことがあります。注意しましょう。

なお、2018年時点の東京都の最低賃金985円をおおまかな月給に換算すると

985円×170時間=167,450円

となります。

もちろん、最低賃金を月給に換算するといくらになるかは、地域や実際の労働時間によって異なります。地域ごとの最低賃金は以下の厚生労働省のサイトで確認できますので、自分の給与が最低賃金を下回っていないか気になる方はチェックしてみてください。


④ほかの名目での手当と一緒になっていない

給料には家族手当、役職手当、住宅手当、営業手当などさまざまな手当が含まれていることがあります。みなし残業を導入する場合は、みなし残業代を各種手当とは区別して支給しなければなりません。

たとえば会社が「営業手当はみなし残業代として支給しているので、一定時間までは残業代は支払わない」と主張していたとしても、裁判で残業代とは違う名目の手当がみなし残業代として認められるケースは少ないです。

営業手当が営業担当だけに支払われているのであれば、それは単なる残業代ではなく、営業経費の補償やインセンティブとしてのお金です。地域手当なども同様で、残業時間に着目して支給される手当ではないため、みなし残業代と認められる可能性は低いでしょう。

また、みなし残業代としての手当だったとしても、その手当が何時間分のみなし残業代なのか明示されていない場合は、①と同様に違法となります。

⑤みなし残業時間を超える残業に対して残業代を支払っている

みなし残業制では、必ず「残業時間とみなす時間」「それに対する賃金」を明記する必要があります。そして、労働者がみなし残業時間を超えて残業をおこなった場合、会社は超過分の残業時間に見合う残業代を支払わなければ違法となります。

みなし残業代は「固定残業代」と呼ばれることもあるため、「みなし残業制ではどれだけ長時間残業しても1ヶ月の残業代は変わらない」と勘違いしている方も多いですが、間違いですので注意しましょう。

みなし残業制を導入しているからといって、会社が労働者の労働時間を記録していないと、裁判では違法なみなし残業と判断される可能性が高くなります。みなし残業制を導入している会社でも、労働者の実際の労働時間はきちんと管理されていなければなりません。


2.みなし残業制でも残業代が発生する2つのケース



これまで説明してきたとおり、みなし残業制は、一定時間分の残業代をあらかじめ決めておく制度であり、残業代の上限を定めるものではありません。

仮に制度が適法に定められていた場合でも、以下の2つのケースでは、みなし残業代とは別に、残業代を請求することができます。

①実際の残業時間がみなし残業時間を越えた場合
②深夜残業・休日出勤などにより残業代の割増率が通常より高くなる場合

それぞれのケースについて、残業代がどうなるか具体的に見ていきましょう。

①みなし残業を超えた金額の残業代


労働者がみなし残業時間を超えて残業をおこなった場合、会社は超過分の残業時間に見合う残業代を支払わなければなりません。

具体的な残業代の計算方法は以下のようになります。

月給25万円(固定残業代4万円含む/25時間分)の人が、実際には月60時間残業した場合

まず固定残業代から1時間当たりの残業代を計算します。

1時間当たりの残業代=4万円÷25時間=1,600円

実際の残業時間60時間から、みなし残業時間25時間を引くと35時間になります。

超過分の残業代は

(1時間当たりの残業代1600円)×(超過分の残業35時間)=5万6,000円

となり、会社は労働者に対して5万6,000円を給与に追加して支払う必要があります。

②深夜残業・休日出勤などの残業代

みなし残業では、基本的に通常の残業時間について定めているため、深夜残業や休日出勤の割増分については別途支払われなければなりません。深夜残業や休日出勤の場合は割増率が増えるので、実際の残業時間がみなし残業時間の範囲内であっても、割増分の支払いが必要となります。

ここではモデルケースとして、

みなし残業代:40時間で8万円(時給1,600円×40時間×1.25)

となっている人が深夜残業や休日出勤をした場合に、支払われるべき残業代がいくらになるかを解説します。

  • 月に通常の残業30時間、深夜残業10時間をおこなっていた場合

    22時以降の深夜残業は、通常の割増率にさらに25%を足して、50%の割増率で残業代を計算します。通常の残業よりも25%増しで計算するので、

    深夜残業の残業代の割増分=(深夜残業10時間)×1,600円×0.25=4,000円

    となり、会社はみなし残業代にさらにプラスして4,000円を支払わなければならないことになります。

  • 月に通常の残業10時間、休日出勤10時間をおこなっていた場合

    法定休日(毎週少なくとも1回、もしくは4週間に4回の休日)に働いた場合は、割増率は35%で計算します。通常の残業よりも10%増えるので、

    休日出勤の割増分=(休日出勤10時間)×1,600円×0.10=1,600円

    となり、会社はみなし残業代にさらにプラスして1,600円を支払わなければならないことになります。

    ただしこのケースでは、残業時間と休日出勤の合計時間が20時間で、みなし残業時間の40時間よりも短くなっています。もし就業規則に「みなし残業には深夜残業・休日出勤分も含む」などと定められていた場合は、割増分を含めた残業代がみなし残業代の範囲内におさまるため、追加の残業代の支払いは不要となります。


3.みなし残業、違法な場合になにができる?請求パターンと方法



会社がみなし残業制を違法に運用していた場合、労働者は会社に未払い残業代を支払うよう請求できます。ここでは、どのような残業代が未払いの扱いになるのか、会社にはどのように請求すればいいのかを解説していきます。

①みなし残業そのものが違法だった場合

その会社でのみなし残業そのものが違法であると判断された場合、会社は残業代を一切支払っていないということになります。そのため、みなし残業代も基本給に含めたうえで、全ての残業時間の合計に応じた残業代を会社に請求することが可能です。

以下のような場合は、みなし残業そのものが違法と判断される可能性が高いです。

  • 会社がみなし残業の金額・時間を定めていない
  • みなし残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っている
  • みなし残業時間が異常に長い
  • 営業手当など他の名目の手当と一緒になっている

この場合は多額の残業代を請求できることになります。ただし未払い残業代は2年で時効により消滅してしまいますので、早めに請求しましょう。

②みなし残業の規定を超えて働いていた場合


みなし残業の規定を超えて働いていた場合は、本来もらうべき残業代と支払われた残業代の差額分を会社に請求することが可能です。

以下のようなケースが該当します。

  • みなし残業で定められた時間よりも長時間の残業をしていた
  • 深夜残業や休日出勤により、みなし残業代とは別に割増賃金が発生した

長時間の残業をしているのに残業代は毎月変わらないという人は、このケースに該当する可能性が高いです。

③会社への請求方法

実際に会社に残業代を請求するにはどのようにすればいいのかを紹介します。

  • 証拠となるものを集める

    まずは以下のような、会社がみなし残業制を違法に運用している証拠となる資料を集めましょう。

    会社が給与の計算方法やみなし残業制について定めている、就業規則や労働条件通知書
    自分の給与明細
    実際の残業時間の証拠となるもの(タイムカード、日報、業務メール、勤務時間を記録したメモなど)

    全ての証拠が揃っていなくても請求はできますが、できるだけたくさんの証拠を集めたほうが請求できる金額は多くなります。

  • 自分で請求or弁護士に相談

    未払いの残業代を支払うよう会社に請求する方法としては、以下の4つがあります。

    自分で会社に請求書を送る
    小額訴訟
    労働審判
    労働訴訟

    労働訴訟は弁護士に依頼する必要がありますが、その他の方法は自分でおこなうことも可能です。

  • 主な相談窓口

    みなし残業に関するトラブルなど、労働問題に関する相談を受け付けている窓口としては、労働基準監督署、全労連労働相談ホットライン、職場のトラブル相談ダイヤルなどがあります。

    未払い残業代を請求する際の具体的な手順や相談窓口については、以下の記事で詳しく解説しています。会社に残業代を請求したいと考えている方はぜひ参考にしてください。



4.まとめ

  • みなし残業では、みなし残業時間と金額の両方を定めていないと違法

  • みなし残業の金額や時間、基本給は適正でなければならない

  • みなし残業時間を超えた時間分の残業代は請求できる

  • 深夜残業・休日出勤の割増分は、基本的にはみなし残業の対象外

  • みなし残業そのものが違法と判断された場合は残業代全額を請求できる

おわりに

会社もみなし残業制のルールをよくわかっていないことが多いため、みなし残業に関するトラブルは少なくありません。

実際にみなし残業制で働いていた人が、裁判で未払い残業代を請求して認められた事例は多いです。

自分の残業代が残業時間に対して少なすぎると感じている人は、この記事で紹介したみなし残業のルールと会社の就業規則を確認して、違法なみなし残業になっていないかチェックしてみてください。


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