サービス残業を無くすには?いまからできる4つの対策と相談事例

2018年10月22日 18:06:00労働問題

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 毎日サービス残業が続き、疲れ果てている人

  • 上司や先輩のプレッシャーでサービス残業をやめられない人

  • サービス残業についてどこに相談すればいいか知りたい人

はじめに

会社に長時間のサービス残業をさせられて苦しんでいませんか?

最近は「働き方改革」が話題になっていますが、いまだにサービス残業が横行している企業も少なくありません。

第一生命経済研究所が発表した調査によると、2017 年の平均一人当たりサービス残業時間は2016年からほぼ横ばいの195.7時間/年。まるまる一か月以上の勤務時間を、無賃金で働いている計算となります。

この記事では、サービス残業がなくならない理由や、サービス残業を減らすために個人でもできる対策を紹介していきます。悩んでいる方は参考にしてみてください。

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1.サービス残業は“違法”!……なのになくならない6つの理由



サービス残業をさせることは違法であり、もし労働者にサービス残業をさせると、会社側には罰金などの刑罰があります。しかしそれでも、いまだにサービス残業がなくなっていません。なぜでしょうか?

ここでは会社側の視点から、サービス残業がなくならない6つの理由を説明します。同じようなことを言われた心あたりがないか、探してみてください。

①「結果主義」という考え方

一部の経営者は、「正社員というのは働いた時間の長さではなく、仕事の結果に対して給料を支払われるものなのだから、残業したからといって別に残業代を支払うのはおかしい」と考えています。

特に営業職の場合は、「売上がないのに残業代を出すのはおかしい」とか、「結果に対する報酬はボーナスで返しているから、残業代は不要」といった考え方で、サービス残業が当たり前になっているケースも少なくありません。

また「正社員の仕事は費やした時間と成果が一致するとは限らない」と考えている経営者もいます。実際に一部の職種では「裁量労働制」という制度を採用することで、何時間働いても残業代が発生しないかたちで雇用することもできるようになっています。

ただし裁量労働制を適用できるのは法律で定められた一部の職種に限られていて、正社員全般に使えるものではありません。

②「成長できる」という考え方

正社員は将来の成長を見込んで採用されているので、一人前になるまではサービス残業して仕事を覚えるのが当たり前、という考え方です。就職したばかりの生社員は給料分の成果をあげていないのだから、残業代を受け取るなんてもってのほか、という経営者もいます。

この考え方は経営者側だけでなく、労働者側も身につけてしまっていることがあります。残業代が出ないからといって残業しない人は、仕事への意欲が低いということで周りの労働者から非難されるケースも。

特にサービス残業が当たり前だった時代に若手社員だった人は、若いうちは無給でも勉強のため残業しろ、と考えがちな傾向にあります。

そもそも労働者が成長すれば最終的には会社の利益につながるのですから、成長するまでは残業代は不要、というのは全く正当性のない理屈です。違法なサービス残業が許される理由にはなりません。

③「能力がない」という考え方

本来の勤務時間内に仕事を終わらせることができないのは、本人の能力が劣っているからであり、そんな人に残業代を払う必要はない、という考え方です。

しかし残業しているのは、会社が労働者に対して業務時間内にとうてい終わらない量の業務を与えているか、残業せざるをえない雰囲気を作り出しているからというケースがほとんど。本当に周囲の人と比べて能力が低いから残業しているという人はあまりいません。

また会社が能力の劣っている労働者に残業させたくなければ、残業をやめるように命令すれば済むことです。残業を黙認している時点で、会社は残業代を払う義務が生じます。

④「仕事が生きがい」という考え方

仕事を通じて会社に貢献し、やりがいを感じることができるので、残業代はいらないと本気で考えているケースもあります。個人が「仕事が生きがい」と考えるのは勝手ですが、往々にして周りの労働者にも同じ考え方を押しつけてくるので困りものです。

また経営者側も「やりがいのある仕事をさせてあげている」という意識になって、サービス残業を正当化することがあります。アニメ・漫画業界など、ぜひその仕事をやりたいという人が多い職業では特に顕著です。

いくらやりがいがあっても、仕事はボランティアではありません。残業として働いた分は、残業代という対価を支払われるのが当然です。

⑤「お金がない」という考え方

会社にとって残業代は人件費であり、コストです。利益をあげるためにはできるだけ残業代を減らしたい、と会社が考えるのは当然です。その考え方がエスカレートすると、「残業代を払うと会社がつぶれてしまうので、残業代を払わないほうが労働者にとっても望ましい」ということになります。

ただ、残業代を支払ったら本当に倒産してしまうような経営状況の会社であれば、サービス残業によって違法に延命しているということであり、倒産したほうが社会のためでもあります。

実際にはただのコストカットのために残業代を支払わない経営者がほとんどですので、会社に残業代を支払うお金がないというのは、サービス残業が認められる理由にはなりません。

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2.サービス残業に困ったら……取れる対策4つ



サービス残業がなくならない原因はさまざまですが、労働者がこれに対抗できる手段はないのでしょうか。

最近ではサービス残業問題への世間の関心が高まっていることもあり、自分で会社と交渉したり、外部機関に相談したりする人が増えています。

ここではサービス残業をなくし、残業代をもらえるようにするための対策4つを紹介していきましょう。

①相談

サービス残業があっても、会社を辞めたいわけではない場合は、いきなり会社と対立するような行動にでるのは得策でありません。まずは直属の上司に相談するか、社内の総務部・人事部などに相談窓口がある場合はそちらに相談してみましょう。

相談することによって、サービス残業自体は改善できなくても、配置転換などの対策をとってもらえる可能性もあります。

特に複数の事業所があるような大企業の場合、本社のコンプライアンス部門の人と、それ以外の支店などで働いている人との間で、かなりサービス残業に対する意識の差があることも少なくありません。

支店ではサービス残業が当たり前になっていたけれど、本社の窓口に匿名で通報したらすぐに内部調査が始まって支店長が社内処分を受けた、というケースもあります。最初から「どうせ社内で通報しても何もしてもらえないだろう」と決めつけず、まずは匿名でも相談してみることが大切です。

また社内に労働組合がある場合は、そちらに相談するのも有効です。会社と社内労働組合との関係はさまざまなので、必ず解決できるとは限りませんが、労働者の力になってくれる可能性は高いです。

社内で相談しても改善できそうになかったら、他の対策を検討しましょう。

②転職

サービス残業について社内で相談しても全く改善せず、その他の待遇に関しても不満が大きい場合は、転職するという手もあります。

転職すると決心したら、退職する前に転職活動を始めましょう。サービス残業をしている状況で転職活動をするのは大変ですが、退職して収入がない状態になってしまうと、あせって安易に転職先を決めてしまう可能性が高くなります。

また退職する際は、法律上は退職予定日の2週間前までに、会社に対して退職の意思表示をする必要があります。ただし、たいていの企業では就業規則で「退職予定日の1ヶ月前までに申し出ること」といったルールを定めていますので、まずは就業規則を確認しましょう。

③通報

会社や社内の労働組合に相談してもサービス残業が減らない場合は、外部の機関に相談・通報するという手段もあります。

  • 労働基準監督署

    労働基準監督署は、企業が労働に関する法律に違反していないかを監督している公的機関です。賃金や解雇、ハラスメントなどの労働問題に関する相談も無料で受けつけています。

    相談するときは、サービス残業があるということを証明するために、以下のような証拠を準備しておきましょう。

    ・雇用条件がわかる書類(雇用契約書、労働条件通知書、就業規則)
    ・給与明細
    ・実際の労働時間を証明するもの(タイムカード、日報、業務メールの送受信履歴、仕事の指示書、勤務時間を記録したメモなど)

    相談の結果、悪質な違反をしている可能性が高いと判断された会社に対しては、立ち入り調査や是正勧告をおこない、状況を改善するための圧力をかけてくれます。是正勧告に従わない会社には刑事罰が課される可能性もあるので、勧告に従って何らかの対応をする会社が多いです。

  • 社外ユニオン(労働組合)

    労働組合には、同じ会社の労働者が集まって運営している企業内組合と、特定の企業に属しない一般労働組合(ユニオン)があります。自分の会社の労働組合に相談しても問題が解決しない場合は、社外のユニオンに相談するという手もあります。

    ユニオンに相談する場合は、ユニオンに加入する必要がありますので、数千円の入会金と月1,000円程度の組合費がかかります。また相談自体は無料で受けてもらえるところが多いですが、ユニオンの協力によって問題が解決したときには解決金を求められることもあります。

    ユニオンに相談する場合も、サービス残業の証拠を準備したうえで相談しましょう。ユニオンはサービス残業などの労働問題について、会社と団体交渉する権利をもっています。団体交渉の結果、会社が残業代の支払いや労働環境の改善を約束してくれることもあります。

    ただし、労働基準監督署やユニオンに相談すると、個人の問題ではなく会社全体の問題に発展しがちです。社内の窓口や労働組合に相談してもどうにもならない、という場合に初めて利用を検討しましょう。

④訴訟

すでに退職することが決まっている場合は、サービス残業したぶんの残業代を会社に請求する訴訟を起こすのも良いでしょう。

通常の訴訟を起こす以外にも、個人請求や小額訴訟、労働審判といった請求方法もあります。いずれの手段をとるにしろ、雇用条件がわかる書類や給与明細、実際の労働時間がわかる証拠をできるだけたくさん集めましょう。

残業代を請求する手順については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。



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3.どんな事例が?サービス残業の訴訟・交渉事例



最近は労働者の権利意識も高まってきているので、サービス残業したぶんの残業代を会社に支払わせるために訴訟・交渉する人も増えています。ここでは実際の交渉事例を紹介します。

①裁量労働制で働いていた女性が、団体交渉で残業代を請求した事例

残業代の発生しない裁量労働制で働いていた女性が、ユニオンを通じて会社と団体交渉をおこない、残業代を勝ち取った事例です。

  • 事例の概要

    ある女性がゲーム制作会社に就職して、月約70時間の残業をしていましたが、残業代は全く支払われていない状態でした。会社側の説明は「ゲーム開発は専門業務であり裁量労働制を適用しているので、残業代は支払わない」というものです。

  • 解決の経緯

    女性がユニオンに相談して状況を詳しく説明したところ、女性の実際の業務内容はゲーム開発ではなく宣伝業務でした。宣伝業務は、裁量労働制を適用できる専門業務には含まれていません。

    ユニオンは労働基準監督署に申告し、この女性に裁量労働制を適用するのは違法であることを確認したうえで、会社側と団体交渉を続けました。

    交渉の結果、会社側は女性に未払いの残業代を支払うことに合意し、サービス残業は解消されました。

  • 参照: ブラック企業ユニオン

②小売店のマネージャー職の人が訴訟で残業代を請求した事例

  • 事例の概要

    小売店のマネージャー職として働いていた男性は、会社からかなり長時間の残業を強いられていたにもかかわらず、管理職だからという名目で残業代を支払われていませんでした。(労働基準法上の「管理監督者」に該当する社員に対しては、会社は残業代を支払う義務がありません。)

  • 解決の経緯

    この男性が弁護士に相談し、弁護士は男性が実際には管理職としての権限を持っていない、いわゆる「名ばかり管理職」と判断。残業代をもらう権利があるということで、裁判で会社と争うことになりました。裁判の途中で会社側と和解し、請求した残業代全額(約720万円)が支払われました。

  • 参照: 勝浦総合法律事務所


4.まとめ

  • サービス残業がなくならないのは「結果主義」や「能力がない」など、会社側が間違った考え方をしているのが原因

  • サービス残業については、まず社内の窓口や労働組合に相談する

  • 社内で相談しても解決しない場合は社外ユニオンや労働基準監督署へ

おわりに

サービス残業がなくならない原因はさまざまですが、違法行為であるサービス残業を続けるべきではありません。

いきなり会社にケンカを売るようなことをしなくても、社内の窓口に相談するだけで状況が変わることもありえます。それでもダメなようであれば、社外のユニオンや労働基準監督署に相談し、退職後に残業代を請求することも検討しましょう。


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