「催眠商法」対策3選!家族が騙されるのを防ぐ方法&返金手段を解説

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投稿日時 2018年10月12日 18時51分
更新日時 2019年09月04日 17時51分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 両親が不審な集会に通いつめており、心配な人

  • 高額商品を買わされてしまい、返金してもらいたい人

  • 家族が知らないうちに高額な商品を買い、困っている人

はじめに

最近、家族や知り合いの高齢者が「良い人がいて、そこからいい商品を買った」などと話す様子や、自宅に突然見たこともない高額商品や布団などが増えていたケースはありませんか。

これらは「催眠商法」(SF商法、ハイハイ商法)という悪徳商法かもしれません。

国民生活センターによると、その被害者のおよそ9割が、60〜80歳の高齢者。判断力が乏しい高齢者に数百万円単位の商品を強引に買わせるなど、悪質な詐欺に発展していることも少なくありません。高齢者以外に、主婦が被害者になるケースもあります。

この記事では、催眠商法の被害から家族を守るために役立つ、その手口や予防法、そして実際に騙された場合はどうすれば良いのかを紹介していきます。


1.高齢者をねらう「新型」催眠商法の特徴と手口



昔の「催眠商法」は、業者がセミナーや期間限定の展示即売会を開いて人を集め、断りにくい状況で高額商品を買わせた後にすぐ行方をくらませるパターンが多く見られてきました。

しかし、最近では長期にわたって会場を開き、高齢者と信頼関係を築いたうえで、何度も商品を買わせたりするケースも増えてきています。

その勧誘から販売までのステップについて、具体的に見ていきましょう。

①チラシや声かけなどで人を集める

まずは、誘い込みの手口です。最初は無料のプレゼントやくじ引きなどの名目で、会場に多くの人を呼び込んでいきます。

  • 「無料プレゼント」のチラシ

    路上で日用品や雑貨などの「無料プレゼント」「試供品」のチラシを配ったり、住居にポスティングするなどして販売所に人を呼び込んで行きます。

  • くじを引かせる

    プレゼントにひかれて集まった高齢者にその場でくじを引かせ、当選したとして実際の展示会場や販売所に行かせるほか、路上で直接くじを引かせて当選させるなどの手口もあります。

  • 会場近くで呼び込みをする

    道行く高齢者に声をかけ、直接会場に招き入れる方法です。極端な安売りをうたうなど、「中に入ると何か得をしそうだ」と思わせるような宣伝文句で引きつけていきます。

  • 友人知人を誘わせる

    これまでに参加しているリピーターに「良かったら友達にも紹介して」と呼びかけ、セミナーの新規参加者を増やしていくこともあります。

これらの手口に実際に遭遇したり、あるいは家族がそういう話をしていた場合、行かないことが一番の予防となります。仲の良い友人知人や家族からの誘いでも、正体のわからない集まりであれば断ったり、行くのをやめるよう話したりしてみましょう。

②会場に人を集め、セールストークで盛り上げる

ある程度会場に人が集まったら、セールストークで場を盛り上げ、ターゲットを絞り込んでいきます。

  • 世間話からはじめ、一体感を高める
    すぐに商品を売るのではなく、最初は世間話などから入ることが大半です。高齢者が共感しやすい健康についての話などをからめつつ、参加者に「信頼できそう」「面白い人だ」と思わせ、心を掴んでいきます。

  • 安い商品を買わせる

    じゅうぶん心を掴んだと判断してから、だんだんと商品の話題に入っていきます。

    しかし、すぐに高額な商品を売るのではなく、はじめは安い商品やクーポンなどを「欲しい人!」などと呼びかけて競争で挙手させ、熱狂を煽っていきます。
    (ここで「ハイ! ハイ!」と言わせることが「ハイハイ商法」の由来です)

    参加者は、商品を貰えれば欲求が満たされるため快感を得られ、貰えなかった参加者は「次こそは」という気持ちになるため、競争心が高まります。

    また、販売員が「きょうだけこの価格」などと購買心を掻き立てる話術も使い、参加者が「今買わないと損をする」という心理を抱かせることもあります。

    こうした流れを繰り返すことで、「話を聞いてくれる面白い販売員に勧められた」という状況を作り出していくのです。

  • 買わなさそうな人は途中で帰すことも

    商品を売っていく一方で、興味がなさそうな人を追い出し、確実に購入しそうなターゲットだけを絞り込むこともあります。

    「ああいう人はダメだ」「仲間ではない」「損をしている」などとして、会場の一体感を高める演出にする場合もあるようです。

    同時に、ターゲットになりそうな人に関しては、「買わない」という意思を見せた途端に「ここに来たのに買わないなんて」と責め立てたり、外に出るのを妨害したりすることもあります。

③高額商品を売り、契約させる

会場の空気が高揚したところで、本命である高額商品の売り込みが行われます。

  • サクラを使い売れている感じを出す

    会場には呼び込まれた人たちだけではなく、業者が仕込んだ「サクラ」要員が存在することもあります。

    サクラは業者の高額商品購入の呼びかけに手を挙げ、他の参加者を焦らせ、参加者に購入をうながす手段として使われます。

  • 「あと○個」などと言って焦らせる

    「あと○個」「きょうだけしかこの価格では売らない」など、「すぐに買わないといけない」と参加者に思わせる脅し文句を使い、判断力を鈍らせて購入するよう仕向けます。


以上が、催眠商法の手口となります。
見てわかるとおり、一度参加すると雰囲気に飲み込まれてしまい、断るのは困難。

また最近は同じ場所で長期間にわたって開催されることが多く、はじめは安い商品目当てであっても、何回も通ううちに断りきれなくなる場合もあります。

催眠商法の被害を防ぐには、参加をしないこと、または参加をやめさせることが一番。

そこで次の章では、家族が被害にあっているかどうかを確かめるためのチェック項目を紹介していきます。


2.催眠商法の被害を見極めるために…注意すべきチェック事項



両親や家族に、以下のような兆候は見られませんか?

いずれも、早めに手を打つことが肝心です。
下記の表でチェックしてみましょう。

①急に見慣れない商品が増えていないか?
②米や砂糖などの日用品が不自然に余っていないか?
③不審なローンが大量に組まれていないか?
④高額の契約書や領収書が増えていないか?
⑤外出する機会が急に増えていないか?
⑥期間限定の店舗が付近にできていないか?

以下、それぞれの項目について解説していきます。

①急に見慣れない商品が増えていないか?

家の中に、これまで見たことがないものが突然増えていませんか?催眠商法で販売されるものは高齢者が好みそうなものや、高級品が主になります。

例として、

  • 健康食品
  • 健康器具
  • 浄水器
  • 布団
  • 下着
  • 仏具
  • 美術品(絵画、香炉など)

などが増えている場合は、注意したほうがよいかもしれません。

②米や砂糖などの日用品が不自然に余っていないか?

催眠商法の初期段階では無料配布の日用品などを配って人を集めたり、本命の高額商品を売る前に、大幅に安い値段で商品を買わせたりします。これらの物品が不自然にあまっている場合、催眠商法にかかっているおそれがあります。

例としては、

  • トイレットペーパー
  • キッチン用品
  • 洗剤
  • 健康グッズ
  • ストッキング
  • パン
  • 砂糖

などの食品であるケースもあります。

無料配布の客寄せ品だけを貰い続けている場合でも、「通っているうちについ買ってしまう」恐れがあることに注意しましょう。

③不審なローンが大量に組まれていないか?

布団などの高額商品は一度に支払える金額ではないこともあり、ローンを組まされることが多くあります。通帳を確認し、詳細不明の引き落としが定期的に発生しているようなら、その支払い先を調べましょう。

④高額の契約書や領収書が増えていないか?

上記に合わせ、見慣れない契約書や請求書、クレジットカード明細、銀行ATMの利用明細などに不審な高額請求や引き落としがないかも確認した方が安全です。

⑤外出する機会が急に増えていないか?

一度会場に足を運んでしまうと、なかなか抜け出せなくなる参加者も少なくありません。これまでに比べ、外出する機会が急に増えていたり、大金を持って出かけるような素振りを見せていたら、行き先や目的を尋ねましょう。

⑥期間限定の店舗が付近にできていないか?

セミナー会場(または販売店舗)は商店街の空きテナントや空き地、スーパーの駐車場、民家、団地内の通路、公民館などで、すぐに撤収できるような形状になっています。近所に最近そのような店舗があったら、注意が必要です。


3.被害に遭ってしまったら?返金のために必要なステップ



これらのチェックの結果、すでに被害にあってしまった場合はどのように対処すればいいのでしょうか。この章で詳しく紹介していきます。

①まずは本人に話を聞く

  • 怒らず、まずは経緯を聞く

    契約や返品には被害者本人の同意が必要になるため、まずは経緯や被害者の言い分もじっくり聞き、話を進めるようにしましょう。この時、消費生活センターなど公的機関の専門員に同席して貰うのも有効な手段です。

    悪質な契約の取り消しは、契約した本人しかできません。しかし、被害者の中には「暇で寂しいから、話を聞いてくれる人に心が動いた」と言う心理もあり、被害者自身が「いいものを買っただけ」「販売員が良くしてくれた」として、多額の金銭を「騙し取られた」とは考えていない場合があります。

    こうなると、被害者の話を頭ごなしに否定したり購入を責め立てたりすると、かえって事態が進まなくなる恐れがあります。

  • 本当にその商品が必要か考える

    大量の日用品や常識的に飲みきれる量を超えた健康食品、装飾品や美術品などは、果たして本当に全て必要なものでしょうか。被害者自身が管理したり、消費したりする必要があるものかを含め、きちんと話し合いましょう。

  • 支払いが多すぎないか考える

    同様の市販品と比べて明らかに高額だったり、本人の支払い能力の限界を超えた請求が来ていたりしないかを、ひとつひとつ確認しましょう。催眠商法の発覚は、高齢者本人が支払いに不安を覚えたのがきっかけであるケースが多いようです。月々の支払いがどのくらいになるのか確認することで、本人も冷静になるかもしれません。

②契約後に使える制度

話し合いの結果、本人が悪質商法の被害にあったと納得したら、返金に動きましょう。
返金に使える制度を紹介していきます。

  • クーリング・オフ

    催眠商法は「訪問販売」「キャッチセールス」などの一種とみなされ、「クーリング・オフ」制度を適用することができます。

    契約書が発行されて8日間(発行日を含む)が手続き期限ですが、契約書がそもそも発行されなかったり、内容に不備があったりする場合はこの限りではありません。

    クーリング・オフは本人の意志ではなく、不意打ちや強制で商品の契約や購入をしてしまった時に、被害者が理由を問わず、一方的に販売者側へ契約や購入の解除を通告することができる制度です。

    一般的には店舗での購入や契約は「自ら足を運んだ」とされ、制度の救済対象外です。

    しかし催眠商法の場合は、「一時的な店舗であること」「自宅への訪問や呼び込みをして人を集めている」などの理由から、クーリング・オフの適用対象となるのです。

    詳しい手順は以下の記事を参考にしてください。

    クーリング・オフとは?詳しい内容や期間、手続きの方法を徹底解説!

  • 契約の取り消し

    クーリング・オフ期間が過ぎていた場合にも、消費者契約法に基づく契約の取消をすることができます。これは販売者と消費者の間で契約を結ぶ際に、不適切な行為があった時に適用されるものです。

    主に「事実を告げない」「困惑させる行為で契約を促した」「その場から帰らせなかった」などの行為をさすもので、購入時にこのようなケースがみられた場合、気づいてから1年以内であれば、契約を取り消すことが可能です。

    契約の取消については個人で行うよりも、弁護士など専門家の力を借りた方が確実です。次の項目で相談窓口をみていきましょう。

  • ③相談窓口

    • 消費者ホットライン

      電話番号「188(いやや)」から消費者庁が全国829か所の消費生活相談窓口を紹介するサービスです。住所や郵便番号などから最寄りの自治体の消費生活センターや国民生活センターを案内してくれるものです。

    • 法テラス

      個人では解決できない場合は、弁護士を頼って解決を目指しましょう。法テラスは身近な法律相談が無料でできるほか、費用が不安な人にも弁護士費用の立て替えなどが利用できます。

      また、同じ販売業者の手口で多くの人が被害にあっている場合は、集団訴訟をすることも視野に入れましょう。

    ④補足:成年後見制度で悪質な契約を予防

    催眠商法は高齢者の判断力が落ちていることにつけ込んだ悪徳商法でもあります。特に認知症や精神障害がみられる場合は、成年後見制度を使って被害を防ぐことができます。

    成年後見人は高齢者の財産や収入・支出など財産についての管理をすることができるため、財産について判断ができなくなった高齢者が高額の支出をしてしまうのを避けることが可能になります。

    制度を利用するためには、家庭裁判所に申請し、調査や面談を経て、裁判所の認定を受ける必要があります。

    こちらの詳しい方法についても、弁護士や司法書士などに協力を求めたほうがよいでしょう。


    4.まとめ

    • 催眠商法は参加してしまうと出ていくのが困難。参加させないことが一番の対策になる。

    • 自宅に見慣れない高額商品がないか、日用品が増えていないか、不審なローンがないかの定期的なチェックを

    • 被害にあった場合も、取り消しは本人しかできない。被害者は被害にあったと思っていない場合もあるため、頭ごなしに説得しようとせず、じっくりと話し合いをすることが大切

    • 被害にあっていた時は、すぐに消費者センター等の専門機関に相談を

    おわりに

    家族の大事なお金が悪徳商法に流れていたとき、そのショックは小さくありません。

    しかし、被害者の中には「体調を気遣ってくれる販売員の言葉を聞いてしまった」という人もいます。日頃から高齢の家族の動向には気を配り、離れた場所なら時々様子を見に行くなどのコミュニケーションがあれば、より被害を防ぐことができるでしょう。


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