フランチャイズ業界はブラックか?その理由と、リスク回避の方法2つ

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投稿日時 2019年06月17日 14時17分
更新日時 2019年06月17日 14時17分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • これからフランチャイズで店を立ち上げようとしている人

  • フランチャイズはブラック労働と聞くけれど、回避策はないのか気になっている人

  • フランチャイズのどの辺りがブラックなのかを知りたい人

はじめに

大阪府にあるセブンイレブンの店舗が、24時間営業を自発的に中止したことが話題になりました。

本部とフランチャイズ契約を結んで店舗運営をするコンビニエンスストアのオーナーなどの働き方が、「ブラックすぎる」と言われて注目されています。プライベートや休息時間を削らなければ成り立たない業態に、疑問の声が上がり始めました。

とはいえ、公共料金の支払いや銀行ATMなど、今や買物以外の社会インフラにもなっているコンビニ。この利便性が、オーナーが自由に店をたためないという足かせにもなっていると言えます。

具体的には、どのような点が問題になっているのでしょうか。

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1.フランチャイズがブラック化する理由4つ



フランチャイズのオーナー業務がブラック化してしまうのは、どのような背景があるのでしょうか。フランチャイズ業界の現場のトラブルや、オーナーの仕事がブラック化する理由を考えてみましょう。

①自分が出勤しないと人手不足を埋められない

人件費を多くかけられないなか、アルバイト従業員が確保できなかったり、休暇などで人手不足になってしまったりした際は、オーナー自らがシフトに入らないと回らない時間帯ができてしまうことがあります。いわゆる「ワンオペ」を強いられてしまう状態です。

それ以外に店舗の運営・管理部分の業務を抱えていると、結果的に自分の休みがなくなってしまうことも。長時間勤務に繋がりやすい原因です。

②コンビニ業務の多様化による「割に合わない」感

最低賃金の見直しで少しずつ時給は上がっているものの、それを追い越す勢いでコンビニの業務量は増えています。

このため、アルバイトの時給が上がっても「きつそう」と敬遠されてしまったり、迷惑行為をはたらく顧客への対応などが「給料に見合わない」などと避けられたりするケースがあります。結果的に人手不足を招き、その穴をオーナーが補填しなければならなくなっています。

③違約金が発生するため、辞められない

それでもオーナーが店舗運営をやめることをできない理由に「途中解約による本部への違約金の発生」があります。

さらに、高齢になったオーナーが店舗をたたんでも、閉店後のキャリア形成などの身の振り方が難しいため、辞めるに辞められないといった問題もあります。

④営業をしなければならない

ちなみに、コンビニ以外の他業種のフランチャイズをみると、例えば学習塾の場合は、コンビニと異なり、自力での宣伝が必要であったり、教師を集めたりするのがより難しい傾向があります。

学校周辺などは学習塾の出店が集中する場所もあり、子供の奪い合いになったり、お受験が多いなど地域のニーズを読んだりという必要が、経営上の負担になることもあります。


2.フランチャイズの加盟者と本部、禁止されている項目4つと両者の関係



フランチャイズ加盟者について、 公正取引委員会 がフランチャイズ本部に対して禁じている項目があります。これらは独占禁止法に当たるものであり、契約の前も、契約後も関係してきます。こちらも知っておきましょう。

また、加盟前に考えておきたいこととして、フランチャイズの加盟者と本部との関係があります。「会社員のように、労働者と経営者ではないの?」という見方がされやすいものですが、そうではないことに注意しましょう。この関係が、労働環境に大きく影響してきます。

この章では公取委が「独占禁止法上、問題となり得る行為」としているものと、本部とオーナーの関係について見てみましょう。

①重要事項について説明がない、虚偽や誇張がある

フランチャイズの加盟希望者に対し、重要事項について十分な開示を行わない、逆に虚偽や誇大な開示をする行為(ぎまん的顧客誘引)

業務内容や利益部分について、実際よりもよく見えるよう誤認させ、不当に誘引する行為です。

②取引上、上になる立場を利用する

加盟者とっては取引上、上の立場にある本部が、加盟者に対して不利益な取引条件を設定する(優越的地位の乱用)

契約締結後に契約内容を変更するなど、正常な商習慣に照らして、優越な地位にある本部が加盟者に不利益を与える場合などを指します。ただし、本部の市場シェア順位、違約金の有無や金額、契約期間など、様々な要因と考慮して判断されます。

③抱き合わせ販売等のしない

本部が営業ノウハウを提供する代わりに、商品の仕入れ先を指定する(抱き合わせ販売等高速条件付取引)

本部の市場の地位、拘束を受ける加盟者の数、規模、拘束の程度などを考慮して判断されます。

④販売価格を拘束する

本部が加盟者の販売価格について、必要に応じたもの以上の拘束をすること(販売価格の制限)

本部が加盟者に商品を直接供給していなくても、加盟者の商品やサービスの価格を拘束することは、地域市場や本部からの関与の状況によっては問題となることがあります。

⑤本部との団体交渉はできるのか

それでは、フランチャイズの加盟者は本部とはどのような関係なのでしょうか。

これについては2019年3月に、中央労働委員会が、フランチャイズ加盟者の労働組合法の「労働者性」について、「独立した小売業者であって、労働契約に類する契約によって労務を供給しているとは言えない」という見解を発表。つまり、通常の労使交渉のような形での対話は望めないという見解を示しました。

つまり、制度上はフランチャイズであれば、オーナーは本部企業の社員ではないため、オーナーがどれだけ働いても本部は感知しなくてもいいということになり、これがよりフランチャイズのオーナーの労働環境のブラック化を後押ししたこともありそうです。

「コンビニのオーナーは労働者か?」enjinで識者に取材した記事はこちらです。


3.それでも増えているコンビニ、フランチャイズのリスク回避方法2つ



フランチャイズを取り巻く現状は厳しいとはいえ、「地域のインフラ」としての存在も期待されているコンビニ。実は、加盟店は増加傾向にあるのです。

大手7社が加入する日本フランチャイズチェーン協会が発表した「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」(2019年4月度) によると、全国のコンビニ店舗数は同月で5万5824店と、前年同月比で0.5%増となっています。

「それでもオーナーを目指す」なら、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。

①事前のリスク確認や下調べをする

中小企業庁が公開している、加盟希望者向け資料 『フランチャイズ事業を始めるにあたって』(2008年度)では、

・加盟者が「独立事業主」であり、本部の社員ではないこと
・事業であるからにはリスクがあること
・事業内容を吟味すること
・契約や事業内容については、納得がいくまで説明を受けること

の4つを柱として、事前に十分な検討をすべきと説明しています。

このほか気を付けることは、周辺環境、人件費や経費の見積り、ロイヤルティー支払いの割合などが含まれるでしょう。

②弁護士に法的なアドバイスを受けておく

契約書で不明な部分があったり、事業主となることが初めてだったりする場合は、弁護士に尋ねてみるといいでしょう。

本部に尋ねても加盟店側に不利な部分まできちんと説明してもらえるとは限らず、第三者で法律の専門家にチェックをしてもらうことで、問題点を洗い出したり、新たに考えたりすることができます。

日本弁護士連合会(日弁連)が、経営者向けの相談窓口 「ひまわりほっとダイヤル」を運営しています。

電話番号 0570-001-240(全国共通)
受付時間 月曜日~金曜日 10~12時 13~16時

③今後の動きは?

公正取引委員会が2019年夏以降、コンビニのフランチャイズ加盟店オーナーに対し、聞き取り調査をする可能性があります。

これは、オーナーが本部から不当に不利益を被っていないかを調べるもので、加盟店の要望や契約条件の変更などを拒否していないなどが調査対象となる見通しです。
参考:2019年6月6日・時事通信『コンビニ「24時間」実態調査へ=今夏にも加盟店にアンケート-公取委』


4.まとめ

  • 人手不足を自分で埋めなければならないために、長時間労働になりがち

  • 本部と加盟者の関係について、公取委が規制している項目があるのでチェックしておきましょう。

  • ブラック問題があっても、加盟店は増えている。どうしてもフランチャイズでオーナーを目指すなら、弁護士に相談するなど、問題点の把握を。

おわりに

毎日気軽に利用し、あって当たり前の生活という人も多いコンビニ。
その陰にあるフランチャイズオーナーの苦労が、最近は注目されるようになってきました。

「出店してくれればいいのに……」という声がある地域もあるため、需要自体はなくなっていません。これまでのオーナーらが声をあげたことにより、今後は環境改善も期待できるかもしれません。

今後、オーナーになる人がよりよい環境で事業を営めるような変化が望まれます。

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