残業時間に新しい上限規制!自分の残業代を知るための3つのポイント

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投稿日時 2019年04月26日 18時31分
更新日時 2019年09月18日 13時50分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 「働き方改革」で残業について規制が変わったと聞くが、正直よくわからない人

  • 自分は残業代が増えたりするのかどうか、きになっている人

  • とりあえず残業時間の規制について情報収集をしている人

はじめに

働き方改革に基づき、残業時間に新しい上限規制が設けられることは知っていても、詳しい内容を知らない方もいるでしょう。

また、残業時間の規制は、業務内容や企業の規模によって内容や施行時期が異なります。

規制上限を超えて残業を求められるケースもあるため注意が必要です。被害を受けないためにも、具体的な規制内容を確認しておくことが大切。

そこで今回は、残業時間の上限の新規制について、自分の残業代を知るためのポイントを解説します。



1.ひょっとしてあなたも該当?新たな残業の上限規制、ポイントはこの2つ



残業時間とは1日8時間・週40時間を超える労働時間のことです。もともと残業時間の上限を制限するルールがありましたが、法律としては明確な上限が決められていませんでした。

2019年4月施行の改正労働基準法により、明確な上限規制が設けられることになりました。

ただし、全ての業務・企業に一律の上限規制が適用されるわけではありません。

そこでこの章では、残業時間の上限規制の新たなルールの要点をご紹介していきます。

①残業の上限規制、なにが変わった?

改正労働基準法には、従来の残業時間の上限規制をそのまま引き継いだ部分と、変わった部分があります。それぞれ詳しくみていきましょう。


  • まず36協定を結ぶ

    36協定とは、労働者と会社の間で交わされる労使協定です。

    会社が労働者に残業や休日労働させるためには、36協定で残業する業務の種類や残業時間の上限などのルールを定める必要があります。

    36協定で定める残業時間の上限は月45時間・年360時間(限度時間)までとされていますが、実は、特別条項という例外ルールを設けることで、この上限を超えることが可能です。

    従来は、この特別条項で設ける残業時間に規制がなかったため、労働者に何時間でも残業させることができました。

    また、限度時間の上限を超えた場合の罰則も特に定められていなかったため、実質的には残業時間の上限は機能していない状態だったのです。

    今回の上限規制では、限度時間を超えられるケースにおいても、残業時間の上限が定められています。


  • 時間外労働は月45時間、年360時間に

    今回の上限規制では、月45時間・年360時間を超えて残業させた場合、会社に罰則が課せられるようになりました。

    また、特別な事情があり限度時間を超えて残業するケースにおいても、次の3つの上限が定められています。

    (1)年720時間
    (2)複数月の平均残業時間80時間(休日労働込み)
    (3)月100時間未満(休日労働込)

②全部の企業に適用されるの?

残業時間の新しい上限規制が適用されるのは、大企業が2019年4月、中小企業は2020年4月からです。

中小企業とは、資本金額または出資総額、常に使用している労働者の人数のいずれか基準を満たしている企業です。

具体的には、以下のような業種・企業が中小企業に分類されます。

業種 資本金の額または
出資の総額
  常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他
(製造業、建設業、運輸業、その他)
3億円以下 300人以下
出典:2019年3月・厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』

残業時間の新しい上限規制については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。参考にしてください。



2.残業時間の規制に対応していないかも?そんなとき頼りたい相談先3つ



新しい上限規制が守られていない、特別条項が定められておらず、月45時間・年360時間以上の残業をさせられている……などの場合は、問題解決に向けて行動しましょう。

まずは、以下のようなフローで専門の窓口に相談することが大切です。

①勤務先のコンプライアンス部門や人事、労組に相談
②外部労組に相談
③労基署への通報や相談
【番外】退職・転職をする

同じ境遇の同僚などにもシェアし、従業員で協力してみるといいでしょう。

①勤務先のコンプライアンス部門や人事、労組に相談

会社は規制に対応していても、上司が新しい規制に対応できていない可能性があります。

そのときは、社内の相談窓口や労働組合に相談しましょう。

企業によっては、法律を厳守した運営を実現するために、コンプライアンス部門が設けられています。

また、人事に直接相談することで、現場の管理者に対して何らかのアクションをしてくれる可能性があります。

②外部労組に相談

日本労働組合連合会など、外部の労働組合に相談することもひとつの手段です。

外部の労働組合であっても、会社は労働組合の交渉に応じる義務があります。

外部の労働組合を選ぶときは、業種別やブラック企業に特化しているかなどで判断しましょう。

また、労働組合を自分で立ち上げることも可能です。

ただし、自分で労働組合を立ち上げても少人数よりも大人数の方が交渉を有利に進めやすいため、人集めや費用の捻出、他のメンバーへ協力を打診などの行動が必要になることもあり得ます。

多忙で自分が主体となった活動が難しい場合は、外部の労働組合に相談した方がいいでしょう。

③労基署への通報や相談

労働基準監督署は、労働問題全般を扱い、会社への指導などを行ってくれる機関です。

「労働問題は労働基準監督署に相談や通報をする」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

実は、通報と相談では、期待できる結果が大きく異なります。それぞれの特徴を詳しくご紹介していきましょう。

  • 通報する

    労働基準監督署に実際に動いてもらいたい場合は、通報しましょう。電話、メール、直接訪問の3つの方法がありますが、強く対応を求めるのであれば直接訪問がおすすめです。証拠を持って訪問できるため、動いてもらいやすくなります。

    労働基準監督署の受付時間は、月曜~金曜日8時30分~17時15分です。

    労働基準監督署の所在地については、こちらをご覧ください。

    また、メールの場合は匿名で通報することも可能です。基本的に、誰が通報したのか明かされることはありませんが、心配な方はメールでの通報が安心です。こちらのフォームから通報しましょう。


  • 相談する

    法的な問題やコンプライアンス違反などが疑われる場合は、まず相談しましょう。

    現在の状況を伝えられるように、残業時間がわかる資料を手元に用意しておきましょう。相談後、対応してもらいたい場合は、改めてその旨を伝えてください。

    相談は、直接訪問よりも電話が手軽です。仕事終わりに相談できるように、受付時間が工夫されています。

    電話番号:0120-811-610
    受付時間:月曜~金曜日17:00~22:00、土日10:00~17:00
    休業日:12月29日~1月3日

    サービス残業の告発方法については、こちらの記事をご覧ください。


【番外】退職・転職をする

労働環境のトラブルが解決したとしても会社に居づらくなるといった場合は、退職や転職を検討しましょう。

雇用保険に加入しており、一定の条件を満たしていれば失業保険を給付できるため、転職活動を円滑に進められます。

退職、転職するにあたり押さえておきたいポイント2つをご紹介します。

  • 失業手当はどういう仕組み?
    退職日の2年前にさかのぼり、雇用保険に通算で12ヶ月以上加入している場合に失業手当の給付対象となります。

    離職の直前6ヶ月の賃金の合計を180で割った金額の50~80%の金額が支給されます。

    支給開始時期は、退職理由によって異なります。自己都合退職の場合は、離職票の提出と求職の申し込みをした日から7日間の待期期間が過ぎ、さらに3ヶ月が経ってから支給開始となります。

    会社都合退職の場合は、7日間の待期期間後から支給開始となり、より円滑な転職へと繋がります。会社都合退職となるのは、次のようなケースです。

    ・離職前6ヶ月間において、月残業45時間以上の月が連続3ヶ月以上ある
    ・離職前6ヶ月間において、月残業100時間以上の月が1回でもある
    ・離職前6ヶ月間において、連続で2ヶ月以上の期間において、平均残業時間が80時間以上である

    会社が会社都合と認めなくても、証拠を持ってハローワークに行くことで会社都合と認定されるケースがあります


  • 次にブラック企業に引っかからないためのポイント

    再び、ブラック企業に転職することがないように、ブラック企業の特徴を確認しておきましょう。

    ブラック企業は、残業代の未払いや規制を超えた時間外労働、福利厚生に加入できない、罰金制度がある、パワハラやセクハラが日常茶飯事などの特徴があります。

    ブラック企業の特徴については、こちらの記事をご覧ください。


3.残業時間と関係深い「残業代」…もしかして未払い?ポイント4つ



残業時間すると、その分の労働賃金である「残業代」が支払われます。

しかし、なかには、残業代を全く支払ってくれない会社もあるのです。

未払いの残業代は、退職後でも請求できます。

まずは、実際に支払われるべき残業代を計算しましょう。そして、時効になる前に会社に請求してください。

未払いの残業代の請求方法を詳しく解説します。

①勤怠記録を集める

労働時間と給与の違いを確認するため、勤怠記録を集めましょう。

具体的には、次のようなものが有用です。

・会社のタイムカード
・自分でつけた勤怠記録(簡易なものでも可能)
・PCの起動時間などの記録(PC内の操作で確認可能)
・家族に帰宅連絡をした記録(メールや通話履歴など)
・給与明細

タイムカードなどは退職後の入手が難しいため、普段から勤怠記録を自分でつけておくことが大切です。

ただし、内容証明郵便を会社に送った後、詳しい勤怠記録などの資料の開示を請求できます。この場合は、資料の開示確率を上げるために、弁護士に依頼した方がいいでしょう。

②残業代の計算方法

残業代は、自分の時給を計算し、残業時間と割増率を当てはめて算出します。

時給=(月給-各種手当)÷(8時間×1ヶ月の勤務日数)

残業代=時給×割増率×残業時間

上記で計算しましょう。

ただし、フレックスタイム制のケースや年棒ベースの場合など、計算が複雑になるケースもあります。

残業代の詳しい計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。


③残業代の時効は2年!

計算した結果、未払いの残業代があったとわかっても、未払いの残業代の請求には時効があります。

給料日の翌日から2年後の給料日当日までが、未払いの残業代を請求できる期間です。

退職後でも請求できるので、過去にさかのぼって残業代を取り戻せる可能性があります。

しかし、過去の未払いの残業代は、証拠集めに苦労したり、請求から支払いまでに時間がかかったりするため、できるだけ早く行動に移すことが大切です。

未払いの残業代の請求の時効について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


④未払い残業代があったら弁護士に相談

未払い残業代を請求するときは、労働問題に強い弁護士に相談してみましょう。

労働問題に強い弁護士は、日本弁護士連合会のウェブサイト から探したり、インターネットなどで検索することができます。

ただし、弁護士への依頼には相談料や着手金、成功報酬などの費用がかかるので注意が必要です。

収入に不安がある方は、法テラスの利用を検討してください。

収入や保有資産などの基準を満たしている場合は、無料法律相談や弁護士費用の一時立て替え制度を利用できます。

法テラス
電話番号 0570-078374
受付時間 月曜~金曜日9時~21時、土曜日9時~17時
休業日:日祝

弁護士費用や法テラスについては、こちらの記事をご覧ください。



  • 集団訴訟

    未払い残業代の場合は、弁護士に依頼するだけでなく、被害者仲間と協力する「集団訴訟」という手段が有用です。

    集団訴訟は、弁護士費用を被害者仲間で分担できるため、経済的な負担を抑えて訴訟を起こせます。また、集団訴訟は話題になりやすいため、会社としても真摯に向き合わざるを得なくなるのです。

    自分だけではなく、同僚や先輩、後輩社員も同様の被害を受けている可能性があるため、積極的に呼びかけてみましょう。


    4.まとめ

    • 36協定で特別条項が定められている場合でも、1ヶ月や1年間の残業時間に規制がかけられている

    • 労働基準監督署への通報や労働組合への相談などで未払いの残業代や残業時間の問題が解決する可能性がある

    • 未払いの残業代は給料日の翌日から2年後の給料日当日までに請求が必要

    おわりに

    残業時間の新しい規制により、労働者の負担が減ることが予想されます。しかし、規制への対応が追い付いていなかったり、そもそも法律を守る気がなかったりして、労働者に大きな負担を強いるケースもあります。労働基準監督署やコンプライアンス部門、労働組合などに相談し、問題解決に向けて行動しましょう。


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