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家族信託で認知症の高齢者を守る…制度の仕組みとメリット4つを解説
投稿日時 2019年04月15日 11時44分
更新日時 2019年04月15日 11時44分

この記事は以下の人に向けて書いています。

  • 高齢の家族の認知症問題があり、財産管理について考え始めようと思っている人

  • そもそも家族信託とはなんなのかを知りたい人

  • 認知症家族の財産管理として、成年後見制度との違いを知りたい人

はじめに

少子高齢化社会の到来が叫ばれて久しい昨今。高齢者の増加に伴い、認知症患者も増加しています。厚生労働省によれば、2020年には認知症患者は300万人を超えると見られています。

認知症になると、本人の意思にかかわらず様々な判断能力が低下してしまうことから、財産管理はどうしても難しくなります。そしてもちろん、家族が財産を勝手に運用・売却することもできません。高齢の家族を抱えている人は、本人の認知機能が低下する前に手を打っておく必要があります。

このような事態に対応するのが「家族信託(民事信託)」です。家族信託を利用すれば、認知症にかかってしまった高齢者の資産を家族が柔軟に管理できます。

本記事では、家族信託の内容や手続き・相談方法について詳説します。また、同じく高齢者の財産管理にまつわる公的制度である「成年後見制度」と比べた家族信託のメリット・デメリットを解説します。


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1.家族信託とはどんなもの?手続きを含めた解説3つ



①健康なうちに…家族信託を行うべきタイミング

家族信託(民事信託)とは、自分の資産の管理・処分を家族に委託できる仕組みです。

高齢になると、認知症以外にも不慮の事故や急な病気など、意思表示が突然困難になる可能性が高まります。

もしそのような事態に陥ってしまうと、高齢者の持つ銀行の預金や不動産などの資産は、家族がいくら案じても動かせなくなる事態が生じ、相続税対策もできなくなってしまいます。

そこで、家族みんなで考えておきたいのが家族信託です。祖父母や両親など高齢の家族が健康で、判断能力が衰えないうちに、財産管理のしかたをよく相談しておきましょう。

②家族信託でできること

家族信託とは、具体的にはどんな仕組みで、どんなことができるのでしょうか。

資産管理や相続の問題であれば、他にも公的制度である「成年後見制度」や遺言状、生前贈与などの手段が存在しています。

たとえば成年後見制度は、判断力の衰えた高齢者に代わって、契約や相続などの法律行為を行う代理人を立てる仕組みですが、裁判所の許可が必要になります。

ほかにも、遺言状は「孫の世代の相続までは指示できない」、生前贈与は「免税対象になる贈与額や贈与後の資産の返却に制限がある」など、各制度ごとに制約があります。

家族信託がこれらの制度と大きく違うのは、資産管理の制限が少なく、柔軟な対応が可能な点です。

家族信託では、「委託者」「受託者」「受益者」の3つの役割があります。

委託者 財産を受託者に引き渡し、信託財産の管理・処分の指示をする人
受託者 委託者から財産を引き受け、信託財産を管理・処分する人
受益者 信託財産を管理・処分したことで生じた利益を得る人(受託者を兼ねる場合もある)

したがって、「父が認知症になる前に息子に財産を相続させたい」という場合、家族信託では父が委託者・息子を受託者として契約を結んでおけば、父の判断力が低下してから息子が父の代わりに生活費の支払い・預金の移動・不動産の処分などを行えます。

また、判断力が低下した高齢者は詐欺の標的にもなりがちです。家族信託で信託財産を若い家族の受託者が管理していれば、詐欺の被害にも遭いにくくなるでしょう。

③家族信託の手続きと流れ

家族信託には3つの種類があります。

委託者と受託者の信託契約
遺言による信託/遺言代用信託
委託者兼受託者による信託宣言

それぞれを見ていきましょう。

  • 委託者と受託者の信託契約の場合、委託者と受託者の間で内容に合意して契約書を作成すれば成立します。必須ではないものの、公正証書の形で作成しておけば、後に財産をめぐるトラブルが発生した際などに備えることができるでしょう。弁護士などの専門家に依頼するのが比較的安全と言えそうです。

  • 遺言による信託の場合、法律で定められた形式で遺言状を書き、その中で死後受託者に財産を信託することを記載します。

    これとは逆に、遺言状がなくても受託者に財産が引き継がれる「遺言代用信託」という手続き方法もあります。遺言代用信託では、委託者は生前から信託銀行に財産を信託し、信託銀行から受託者に財産を払い出します。

  • 委託者兼受託者による信託宣言とは、子に残す信託資産と存命中の親が自分で管理する財産を分離する家族信託です。この場合は、公正証書で意思表示をしないと無効になってしまうため注意が必要です。

ここまでに紹介したように、家族信託の手続き自体は家族が自力で進めることも不可能ではありません。

しかし、まったく専門の人間・機関を通さずに契約したばかりに、あとから不備が発覚してせっかく準備した家族信託が無効になってしまっては元も子もありません。

確実な家族信託の利用のためには、専門家に相談しながら手続きを進めていきましょう。

多くの場合、次に示すような専門機関がセミナーを開催したり、相談窓口を設けたりしています。

・弁護士/司法書士
・税理士
・会計士
・銀行/郵便局などの金融機関
(※家族信託を受け付けている銀行は限られているため注意が必要)



  • 書面は公正証書にした方がいい?

    委託者が受託者を兼ねる場合以外は、公正証書を作成することは必須ではありません。しかし、確実に財産を移行する家族信託は、遺言書よりも慎重な書面作成が求められます。契約の内容も複雑なため、専門家の立会いのもとで書面を作成する公正証書にすることをおすすめします。

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2・「成年後見制度」との違いは?家族信託のメリット・デメリット



家族信託と似た制度に「成年後見制度」があります。本項では、成年後見制度と家族信託がどのように異なるか比較しながら、なぜ家族信託が注目を集めるのか解説します。

①認知症の家族の財産管理、公的制度はどんなもの?

認知症対策として家族の財産管理を行う公的制度には、家族信託のほかに「成年後見制度」があります。

成年後見制度には、法定後見任意後見の2種類があります。

  • 法定後見:すでに判断能力が不十分な家族について、家庭裁判所に申し立て、後見人を立てる制度

  • 任意後見:判断能力が十分なうちに、本人が将来判断能力が衰えた場合に備えて後見人を選び、公正証書で契約する制度

成年後見制度を用いると、後見人が被後見人(本人)のかわりに財産や権利を守ることが可能になります。

成年後見制度の詳細は、以下の記事で解説しています。


②成年後見制度と比較した家族信託のメリット4つ

  • 家族の責任と判断で資産管理ができる

    成年後見制度の場合、後見人の主な目的は「被後見人の財産を守ること」です。そのため、財産の運用や売却は家庭裁判所が認めない限りできません。被後見人の口座からお金を引き落としたり、不動産を処分したりすることは不可能になります。

    一方、家族信託では、意思決定には委託者と受託者になった家族しか関与しません。それだけに、家族の判断である程度自由に資産を管理することが可能です。


  • 本人が元気なうち、認知症になる前でも手続きができる

    成年後見制度では、家庭裁判所による鑑定を経て、認知機能の低下を認めてもらう必要があります(法定後見の場合)。

    家族信託は認知症になる前から手続きできるため、事前の対策として最適です。


  • ランニングコストがかかりづらい

    成年後見制度で家庭裁判所が指定する後見人は家族に限らず、弁護士や司法書士などの第三者が選ばれることがあります。

    後見人が第三者の場合、後見人に報酬を支払う義務が発生します。また、あまり考えたくないことですが、第三者が絡むことで生じる着服のリスクも少なくありません。

    このため、相続する財産が多くない場合は特に家族信託がおすすめです。


  • 柔軟な財産管理ができる

    家族信託であれば、孫の代やその先の代の資産管理まで決めておけます。さらに、もし受益者に据えられた孫などがまだ小さく、財産を託せなかった場合、代わりに資産を管理する受託者を親戚に設定することも可能です。

②家族信託で困ることは?デメリット4つ

メリットばかりに見える家族信託ですが、決してそうではありません。家族信託ではカバーしきれない部分を成年後見制度が補ってくれるケースもあります。家族信託と成年後見制度を相反するものと考えるのではなく、余裕があれば併用するのがベストです。

家族信託のデメリットには、以下のようなものがあります。

家族だけで運用し続けるのは限界がある
認知能力が衰えてしまった後には信託できない
身上監護がない
節税が期待できるわけではない

それぞれについて見ていきましょう。

  • 家族だけで運用し続けるのは限界がある

    家族信託では裁判所などの公的機関を挟まないため、資産管理の報告義務は発生しません。それゆえ、何か起こっても家族で相談して解決していく必要があります。

    とはいえ、資産の管理は複雑です。誤った判断をしてしまうおそれがあるため、法律の専門家の知恵を借りる必要があるでしょう。

    一般的に家族信託の相談にはコンサルティング料金が発生しますが、成人後見の後見人報酬に比べて相場が高いことが多く、結果的に高くつく可能性があります。


  • 認知能力が衰えてしまった後には信託できない

    前項とは逆に、もし認知症になってしまった親の資産をどうにかしようと思っても、選択できるのは法定後見のみです。家族信託を実施したければ、認知症になる前に先手を打つことが何よりも重要と言えます。


  • 身上監護がない

    成人後見制度では、被後見人の身上監護(生活・医療・介護にかかわる契約や手続き)を後見人が行う権利があります。

    一方、家族信託はあくまで財産管理上の制度であるため、身上監護の権利がありません。もし本人の同意が必要な医療行為や契約行為が必要になった場合、家族信託だけでは対応できない状況に陥るリスクがあります。


  • 節税が期待できるわけではない

    相続税を抑えるために一般的な手法が生前贈与です。家族信託は自由な資産管理ができるため、生前贈与と併用できます。ただし、家族信託自体は特に税制優遇があるわけではないため、注意が必要です。

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3.認知症の家族について支援が必要になったら…相談先4つ



家族が認知症になってしまった場合、どういった機関に相談すればよいのでしょうか。本項で、代表的な4箇所をご紹介します。

①地域包括支援センター

地域包括支援センターは、各都道府県に存在する、介護保険法で定められた総合相談窓口です。

認知症支援マップ』では、全国各地の地域包括支援センターや認知症に対応可能な医療機関を検索できます。

②各自治体の役所・保健所

各自治体では、福祉政策の一環として認知症相談窓口を設けている場合があります。各地のホームページを確認したり、役所に問い合わせてみるとよいでしょう。

③認知症の人と家族の会

『公益社団法人 認知症の人と家族の会』では、フリーダイヤルの電話窓口を設置し、認知症に関する知識提供や介護のアドバイス、お悩み相談などに対応しています。

電話番号 0120-294-456
(携帯電話からかける際は 075-811-8418 )
対応時間 10:00〜15:00(土・日・祝日を除く)

各都道府県の支部にも窓口があり、ホームページから一覧がチェックできます。

④医療機関のもの忘れ外来

医療機関によっては、認知症に特化した外来を設けていることがあります。

認知症の人と家族の会では、もの忘れ外来・認知症外来を設置している全国の医療機関を独自にデータベース化しています。以下のサイトからアクセス可能です。


4.まとめ

  • 家族信託(民事信託)とは、自分の資産の管理・処分を家族に委託できる仕組み。成年後見制度や遺言書をはじめとした従来の資産管理方法にくらべ、柔軟な財産管理が可能

  • 家族信託・成年後見制度ともにメリット・デメリットがある。理解した上で状況にあった制度を利用、可能なら併用しよう

  • 家族が認知症になってしまった場合、地域包括支援センターや認知症の人と家族の会のウェブサイトから近くの医療機関を探そう

おわりに

認知症は突然降りかかるもの。他の病気や事故などがきっかけで急速に進むこともあります。
高齢の祖父母・両親のが認知症になってしまったときに慌てずに済むよう、あらかじめ家族で話し合う場を設けておくことが重要です。


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